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府医ニュース
2024年5月15日 第3072号
宮仕えする人をば、淡々しう、悪ろき事に、思ひ居たる男こそ、いと、憎けれ。
枕草子第21段(24段とする本もある)
平安時代の貴族の女性にとって「外で働く」といえば宮中などで女房(女官)として働く「宮仕え」であったでしょう。それを悪く言う男は、清少納言さんにかかれば「いと、憎けれ」とバッサリです。女性が外で働くことの是非の議論は、昭和の頃まで千年も続いていたように思いますが。
さらに「娘は宮仕えに出して、社会経験をさせるのが良い」「結婚後も折々に出仕するのは、面目のあることだ」「家庭に入っても宮仕えの経験は役に立つ」と述べています。
一方、宮仕えを悪く言う男にも一理あるとも述べています。理由は、上は帝や上流貴族から下は厠(トイレ)掃除の者まで、様々な階層、職種の人たちに「顔を見られる」から。当時の貴族の女性は顔を見られないように御簾の中にいたと思いますが、宮仕えに出たらそういう訳にはいかない、様々な人々に接することにより、恥ずかしい思いをしたり、苦労したりすることもあるという意味なのでしょう。ここには、宮中で働いたり、出入りしたりしている様々な人達が列挙されており、現代では身分の差はありませんが、多職種が働き、患者さんやその家族が出入りしている病院を連想しました。
さて、私が平安時代に生きていたらどうしていたかなと考えて、はたと気付きました。どう考えても私は庶民の娘なので、宮仕えなど無縁、疫病の流行の中、生き延びるだけで必死だったことでしょう。(瞳)
参考:校訂・訳 島内裕子「枕草子」(ちくま学芸文庫)