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奇跡、紀寿の現役医師

府医ニュース

2024年5月1日 第3071号

 遅かった桜が満開を迎えた頃、大阪市住之江区の医院に池川清彦先生を訪ねました。先生はこの地に医院を開設して七五年になります。百才を迎えられることを機に、本年四月よりご子息裕彦先生に継承されました。百才にして現役、まさに奇跡の医師というべきであります。
 先生のお生まれは大正十三年。昭和二十年大阪帝国大学附属医学専門部を御卒業になり、第一内科に入局されました。臨床のかたわら神経疾患の研究に取り組まれ、二十九才にして学位(テーマは筋ジストロフィー)を取得されました。その間、伴侶となった緑先生とともに住之江区で医院を開設されました。昭和三十年からは奈良県の済生会御所病院に副院長として勤務され、平成八年からは同病院院長として発展に尽くされました。十八年に八十一才で退職されるまで勤続半世紀とは驚きであります。伴走の緑先生がお亡くなりになってからは、医院の院長として地域医療に邁進され、今日に至ります。
 済生会御所病院では内視鏡の診断と治療を確立される一方、病院の規模拡大に尽力され、恩賜財団から幾度も表彰されています。平成十四年、日本医師会より「胃カメラ」の業績で最高優功賞を授与されました。本会から「白寿」の感謝状を贈呈されたことも記憶に新しいところです。
 健康長寿の秘訣を伺うと「そのようなことはナニもありません」と一言。大変だったご苦労は「そのようなことはナニもありません」とさらりと。では、今日までで一番よかったことは、学位取得と伴侶を得たことと、マシンガントークとなりました。阪大第一内科で指導を受けた王子喜一先生(第六代堺市立病院長)への思慕と報恩にはじまり、長かった勤務医時代を支えてくれた奥様、緑先生への感謝の念を繰り返されました。
 医院の待合室の患者さん達の声が聞こえてきて、インタビューも中締めとなりました。池川先生、これからも、どうかマイペースでご活躍ください。先生は私達の至宝であります。

住之江区医師会 播村 佳昭