TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

時の話題

高齢者救急搬送の対応

府医ニュース

2024年5月1日 第3071号

地域包括医療病棟の新設および医療と介護の連携強化

 65歳以上の高齢者が3人に1人になると同時に人口減少が進む「2040年問題」。これを見据えて、今年度の診療報酬と介護報酬の同時改定で、高齢者救急搬送に対応する「地域包括医療病棟」の新設、さらに介護施設の入所者を急変時に受け入れる協力病院との連携が義務化された。
 高齢者人口の増加に伴い、高齢者の救急搬送人員が増加し、軽症・中等症の尿路感染症や誤嚥性肺炎が増えている。重症の脳血管障害や心疾患は少ない。しかも、これら軽症・中等症の2疾患は、急性期一般入院料1の病棟(約65%)や特定機能病院または治療室等(約10%)で大半が入院治療をしている。
 また、75歳以上の誤嚥性肺炎に対する入院料間の医療資源投入量の比較(急性期一般入院料1と地域一般入院料1―2の比)は1.24、尿路感染症では同1.40となり、大きな差はない。中央社会保険医療協議会(中医協)でも、急性期一般入院料1の病棟は、もっと重症の症例に回し、有効利用するべきとの意見があった。
 DPC対象病院に入院した70歳以上の誤嚥性肺炎患者を対象とした研究で、入院後3日以内の早期リハビリテーション(以下、リハ)の実施は有意に死亡率の軽減、さらに入院後7日以内の早期リハの実施は有意にADLの改善と関連していた。
 40~69歳の患者では入院時85.5%に低栄養リスクがないのに対し、70歳以上の高齢者では41.9%で低栄養リスクがあり、25.7%は低栄養であった。管理栄養士が入院後48時間以内に栄養スクリーニングを実施し、個別の栄養管理を実施した場合、入院後30日以内の負の臨床アウトカム(死亡、ICU入院、院内感染、呼吸不全等)や全死亡率が低下したという報告がある。
 以上の議論を踏まえて、地域包括ケア病棟は、看護配置が13対1であり、軽症・中等症の誤嚥性肺炎や尿路感染症を治療管理するには不十分である。そこで「地域包括医療病棟入院料」が新設(1日3050点)された。その要件は、①看護配置10対1以上②常勤のリハ職2人以上③専任の管理栄養士1人以上④平均在院日数「21日以内」⑤退院の8割以上は在宅などに退院――である。加えて、新病棟では「リハ・栄養・口腔連携加算」を1日80点として14日間算定できる。
 地域包括ケア病棟協会は、「地域包括医療病棟への転換意向調査」結果を発表した。それによると「転換する」5病院(4%)、「転換しない」48病院(43%)、「検討中・未定」59病院(53%)となっている。
 また、医療と介護の連携強化が義務化された。介護報酬改定で、特別養護老人ホーム等高齢者施設に近隣の協力医療機関との連携を義務付けた。要件として▽入所者の緊急時の入院受け入れ▽施設からの相談体制を常時確保▽診療の求めに常時対応――が求められる。
 高齢者施設の方が多く医療機関の少ない地方では、医療機関の過剰な負担が心配される。