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春はどこから

府医ニュース

2024年4月17日 第3069号

髪切りて
  今日から春の
      人と成る
  ゆっここ
   (俳句てふてふ)

 新生活が始まる4月。わくわくとどきどきが入り混じる季節だ。
 高齢化の波が押し寄せている我が家は、かつて新興住宅地やベッドタウンとよばれた地域にある。高齢化が進み、子や孫世代と同居もしくは近くに住んでいる割合は、多くない。子どもの元へ転居する方、施設に入られる方など、空き家の割合も年々増えている。昼間は、デイサービスの送迎や訪問看護の自動車をよく見かけ、夜中に救急車のサイレンが響くのもまれではない。それでも、住民のアナログネットワークは緊密だ。
 入院と退院を何度か繰り返し、外出の機会がめっきり減り、要介護の親に、訪問美容師さんをお願いした。ご近所さんからのお声がけだった。がん末期と診断され在宅医療を受けておられるものの、体の痛みや少なくなった髪と付き合いつつ、今も変わらずおしゃれな人だ。
 訪問美容師は、高齢者や身体の不自由な方など、自ら美容院や理容院に行けない方に対してカットやカラーなどを行う職業で、自宅や介護施設、病院などを訪問して施術を行う。うちに来られたのは、訪問介護員の資格を持った方で、施術前から施術中も、常に体調を確認し、身体への負担を考慮してくれた。個人宅だけでなく、施設では、数人をまとめて、カットやカラー・パーマを行う。ご本人は、ずっと腰痛だそうだ。
 カットに要したのは短い時間だったが、きれいにしてもらったと喜ぶ表情で、ようやくうちにも春が来た。(颯)