TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

令和6年度大阪府医師会事業計画

府医ニュース

2024年4月17日 第3069号

 日本は、国民皆保険制度の下、これまで充実した医療制度により、長寿社会を実現し、健康寿命を延伸してきた。新型コロナウイルス感染症の発生により、国内でも3300万人以上が感染し、健康被害に大きな影響を与えたが、諸外国に比べて低い致死率に抑えられている。発熱外来等のコロナ対応した医療機関に限らず、通常医療として国民の医療を支えてきた医療体制、国民の感染対策、未知のウイルスに対応するため医療従事者の献身的な努力によるものである。新型コロナウイルス感染症が令和5年5月から感染症法の位置づけが5類感染症に移行し、令和6年4月より改正感染症法が施行されるが、今後の新興感染症に対応できるよう、それぞれの医療機関の機能に応じた適切な評価と医療体制の整備が求められる。また、災害が多い日本においては、医療の効率化の観点ではなく、新興感染症や災害にも対応した医療提供体制の充実強化が必要である。
 令和6年度の診療報酬改定については、「全体」で▲0.12%となり、診療報酬(本体)は+0.88%引き上げるとされた。看護職員・病院薬剤師等の医療関係職種の賃上げ+0.61%、40歳未満の医師・事務職員等の賃上げ+0.28%、入院時の食費基準額の引き上げの対応+0.06%、その他の財源+0.18%とされた一方、生活習慣病を中心とした管理料、処方箋料等の再編等の効率化・適正化として▲0.25%となった。賃上げに関するものが+0.89%とされたことは評価できるが、使途が限定されていない実質の改定財源は0.18%のみであり、効率化・適正化の▲0.25%を考慮すると、満足できる結果とは言えない。前回同様、改定財源の多くは使途が示されているが、本来、改定財源の配分は、中央社会保険医療協議会(中医協)で議論されるものであり、改定財源を確保し、使途を限定せず、中医協で議論した上で、配分を決定すべきである。
 医療制度改革として、長期収載品の保険給付に選定療養の仕組みが導入される。「長期収載品の薬価」と「後発医薬品の最高価格帯」との価格差の4分の3までを保険給付の対象とし、価格差の4分の1が患者負担となるが、医療上必要な場合は、患者負担は生じないなど、対象の有無や患者負担額が煩雑になることから、制度の周知徹底が必要である。本来、長期収載品であっても薬価を見直した上、保険診療で処方する医薬品はすべて保険給付すべきであり、長期収載品は今後も増加することを鑑みれば、一つの基準が策定されると国民負担が増え続けることになり、保険給付の選定療養化については見直すべきである。
 オンライン診療において、初診時の麻薬・向精神薬の処方や、対面診療が5割に満たない医療機関が存在するなど、中医協で不適切な運営が指摘されている。初診からのオンライン診療については、対面診療を原則とし、保険診療においては、一定の制限を設けるべきであり、中医協において大規模調査に基づく十分な検証を行った上で見直す必要がある。
 令和6年12月2日より健康保険証の発行が終了し、マイナンバーカードによる健康保険証利用を基本とする仕組みに移行される。マイナンバーカードによる保険証利用率が伸びない状況で健康保険証が廃止されると、医療現場が混乱する恐れがあり、保険者から被保険者への十分な周知に努めるとともに、資格確認書等の取り扱いについても、国民に理解を求める必要がある。
 令和7年4月からのかかりつけ医機能報告の施行に向けて医療機能情報提供制度による国民・患者への情報提供が充実強化される。かかりつけ医機能を有する医療機関に対しては、かかりつけ医による疾病管理が適切に行われるよう、診療報酬上で十分な評価を行うべきであり、フリーアクセスを阻害する、かかりつけ医の登録制や認定制度の議論が再燃しないよう、引き続き注視していかなければならない。
 今なお、医薬品の供給不足が解消しない状況が続いている。後発医薬品における少量・多品目生産の構造上の問題があり、企業論理に任せていては医薬品の供給不足は今後も解消しないことから、国が積極的に医薬品製造販売業者への指導を行い、医薬品業界の再編を図る必要がある。また、後発医薬品の価格補償対策を実施し、品目数の適正化や適正規模による生産能力の向上を図り、一刻も早く安定供給を行う体制に戻さなければならない。
 令和6年4月から、医師の時間外労働に係る上限規制が実施される。医師派遣の状況によっては宿日直体制が維持できず、地域医療提供体制において、救急医療体制が縮小、撤退することのないよう、行政としても状況確認を行い、該当する医療機関に対して支援を行う必要がある。医療においては、医師の働き方改革が進められており、医療関係者の処遇改善も行うべきである。医師会事業を円滑に遂行するためには、役職員が一体となって職務にあたることが重要であり、役職員が働きやすい環境作りに取り組む必要がある。あわせて、職場におけるハラスメント防止に努め、ハラスメントに対応する第三者委員会の設立についても検討していかなければならない。
 少子・超高齢社会を乗り切るには、子どもを育てる環境を整備し、必要な医療を受けられる体制を維持し、国民が安心して暮らせる社会を構築する必要がある。その根幹は社会保障であり、国家として財政支援を行うべきである。あるべき医療の姿を実現し、国民が求める持続可能な社会保障を充実させるため、日本医師会に医療施策の提言を行い連携を図りながら、国民とともに積極的に国への働きかけを強化する。

地域包括ケアシステム

 超高齢社会の進展に伴い、団塊の世代が後期高齢者となる令和7年(2025年)、その先の令和22年(2040年)を見据えて、切れ目のない「地域完結型」の医療・介護提供体制の構築など、地域包括ケアシステムの深化・推進が課題となっている。これを踏まえ、第8次大阪府医療計画に、「在宅医療に必要な連携を担う拠点(以下、拠点)」および「在宅医療において積極的役割を担う医療機関」が位置付けられた。今後は、この「拠点」を中心に、入退院支援から看取り、急変時の対応まで地域で完結できる体制を構築していくこととなる。
 なお、「拠点」の取り組みについては、市町村が実施する在宅医療・介護連携推進事業と、障害・福祉に係る相談支援等の取り組みとの整合性が求められることから、「拠点」となる郡市区医師会や市町村、および保健所、地域の介護・福祉職等との生活全般を基盤とした連携を支援していく。
 認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができる社会の実現に向け、認知症基本法が令和5年6月に成立、令和6年1月より施行された。同法は、本人の尊厳の保持、認知症でない人達との共生を理念として、医療・介護体制の整備や予防・進行抑制の確立、社会参加・就労支援促進、家族支援の充実等が施策の柱となっている。府や市町村の認知症施策推進計画策定に向け、患者や家族の生活の視点を踏まえた計画となるよう支援する。

BCP策定の促進

 令和6年1月に発生した能登半島地震をはじめ、近年、大規模な自然災害が相次いでおり、平時からの災害や新興感染症等に備えた地域づくりが求められている。患者の搬送、診療場所の確保等を含め、地域全体の連携が無ければ必要な医療を提供することはできない。医療機関だけでなく、介護・福祉施設においても、発災後のサービス継続は大きな課題となっており、災害弱者や要配慮者への対応を含め有事の際は連携の重要性がさらに増す。特に長期間の避難所生活では、高齢者の認知機能の低下が懸念されるなど、医療・介護・福祉機関や行政との連携をベースとする「地域包括型BCP」の策定が求められる。災害関連死の発生防止のためにも、地域全体での訓練の実施やプランの見直しを定期的に行う仕組みづくりが必要であり、各方面に対して働き掛けを行っていく。

障がい者・自殺対策

 平成28年4月からの「障害者差別解消法」施行により、大阪府は「大阪府障がい者差別解消条例」を策定。障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら身近な場所において日常生活・社会生活を実現できるよう、障がい者の差別解消に努めている。令和3年6月に同法の改正により、民間事業者による合理的配慮の提供が、努力義務から法的義務へと変更された。すべての人間がともに尊重しながら生活を送れる社会の実現を目指し、障がい者差別解消への理解促進のため、周知・啓発を図っていく。
 令和5年における大阪府の自殺者数は、914人(11月までの暫定値)と前年度に比して減少傾向にはある。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響は未だ大きく、引き続き、精神面での対策の継続が必要である。加えて、若年者の自殺者数増加に対する支援および対策は喫緊の課題である。自殺の動機には、学校問題や家庭問題、経済・生活問題など複合的な要因が挙げられるが、今後も医療の観点から自殺の防止や未遂者への支援も含めた積極的な施策が展開されるよう関係機関に連携・協力を求める。

救急医療

 平成12年当時、府内に304施設存在した救急告示機関は、平成19年には医療費抑制策や医師不足を背景に259施設まで減少、その後やや持ち直したものの令和5年において283施設と従前ほどには回復していない。地域の二次救急医療体制が診療科目を問わずに脆弱化しているなか、令和2年来の新型コロナウイルス感染症への対応では、救急医療体制が一時的に機能不全を来たす場面があった。今後、働き方改革が医療機関に定着していくと、医師確保が一層困難化し、多大な影響が救急告示医療機関に及ぶ可能性がある。救急医療体制の弱体化が懸念される。このような中、救急患者の恒常的な受入を促進し、ひいては救急体制の向上を図るため、令和5年度に大阪府内の救急告示医療機関の認定基準が改正され、令和7年度申請分から新基準が適用されることになった。この基準改正については、新基準を達成できない病院がいくつか発生する恐れがあり、地域によっては多大な悪影響が及ぶ可能性を内包しているため、当面、告示医療機関数の動向等を注視していく。初期・二次・三次救急医療体制がより効率的に機能し、さらなる地域体制の向上を目指すにあたっては、府内の救急搬送・病院受入調整の洗練を図り、持てる救急医療資源を最適利用する必要がある。救急搬送支援・情報収集・集計分析システム(ORION)データを利用した医療統計等解析などに積極的に関与し、その結果に基づいた医療機関などの相互連携と情報共有化を図り、効率的な救急医療体制の整備に努める。救急救命士法改正による救急救命士業務の場の範囲拡大などに伴う特定行為等の質の担保とあわせ、メディカルコントロール体制の一層の強化充実を目指す。また、小児科、精神科、眼科、耳鼻咽喉科などの特定科目における救急医療体制の充実に引き続き貢献していく。
 近年、日本各地で大きな地震や土砂災害が多発しているが、令和6年1月に発生した能登半島を震源地とするマグニチュード7.6で最大震度7の地震は、石川県等に多大な被害をもたらした。この令和6年能登半島地震について、本会は対策本部の設置を図り、有志を募ってJMAT大阪を派遣し、現地にて医療救護支援活動を展開している。今回の派遣を通じて、平時に有事態勢を整えることの重要性を、再認識した。近畿圏では南海トラフ地震が指摘されており、有事の対策・体制の整備に向け、保健医療福祉調整本部における災害医療コーディネート機能の点検や、日本医師会と連動したJMAT研修や派遣体制などの充実を図る。また、DMATをはじめ各関係機関とも緊密な連携を進めるとともに、災害時における薬剤の備蓄・流通および医療施設や救護所における適正な薬剤管理に向け、大阪府薬剤師会との災害時協定の締結を目指す。
 2025年の日本国際博覧会(大阪・関西万博)については、開催期間中の想定来場者数が2820万人と試算されている。世界的なビッグイベントはテロリズムの恰好の標的となるため、早急にマスギャザリング・CBRNE(化学・生物・放射性物質・核物質・爆発物)災害対策を講じる必要がある。特に医療救護に関しては、会場内外の医療救護体制、救急搬送体制が重要となるが、ひとたびCBRNE災害が発生すると、診療所等にも患者が訪れる可能性があるため、迅速・的確な対応のため、多くの医療関係者が一定の知識を習得することが望まれる。このため、体制の整備、対策の充実に向けて、関係機関との調整を進める。

周産期医療

 少産・少子の傾向が一段と進んでいる一方、思いがけない妊娠や望まない妊娠に係る出産は虐待につながりやすい。大阪府が行う「にんしんSOS」など妊娠に悩む方のサポート体制の拡充を求めるとともに、健康でたくましく生き抜く子ども達を育て、精神的なサポートを含め、女性が安心して妊娠・出産・育児ができるよう、妊娠期から子育て期にわたる医療・保健・福祉の切れ目のない支援のために一層努力する。
 また二次・三次周産期医療の現場は、医師不足、過重労働等々により疲弊し、混乱を来している。未受診妊婦を出さないための妊婦健診の拡充をはじめ、すべての妊婦・新生児が安心・安全な医療を受けられる体制整備を図るため、産婦人科救急搬送体制確保事業を維持するとともに、NMCS(新生児診療相互援助システム)ならびにOGCS(産婦人科診療相互援助システム)における緊急時、ハイリスク分娩などに備えた取り組みを引き続き支援していきたい。こども施策を社会全体で総合的かつ強力に推進していくため、政府は令和5年4月に「こども基本法」を施行し、令和5年12月には「こども大綱」をまとめ、〝こどもまんなか社会〟の実現を目指す方針を明示している。このような社会情勢を背景として、今後、小児医療について関心が高まることが推察されるが、大阪府は令和4年度に小児中核病院、小児地域医療センターを指定し、今後、これらの施設を拠点として各地域の小児救急医療体制の充実を目指す計画を提示しており、具体的施策の推進について本会は協力を図る。
 さらに、従来から進めてきた集約化・重点化も含めた医療機関の機能分担や連携の推進、周産期医療を担う人材の確保とともに、妊産婦のメンタルヘルスや災害時、新興・再興感染症の感染拡大時への対応など直面する課題について体制整備を図っていく。

女性医師支援

 医師の不足と偏在による地域医療への影響が懸念される状況にあって、増加する女性医師の就業環境の整備および改善に対する取り組みが不可避の事態となっている。本会では、平成22年度から「大阪府医師会女性医師支援プロジェクト」に基づき、育児支援体制の整備・充実を図っている。さらに、新型コロナウイルス感染症に対応する中で出てきた課題の抽出とともに、男女共同参画検討委員会および大阪府内二次医療圏11ブロックを4つに集約した女性医師支援ワーキンググループの活動推進により、冊子「医師の働き方改革(男女共同参画事業)」の改訂や講演会、座談会開催では、他職種(民間企業)の取り組みを参考にするなど、新たな観点から時代に即した施策の展開に努める。男女を問わず多様な働き方を尊重した環境整備が、今後の取り組むべき課題であることを共通認識と捉え、さらなるワークライフバランスを確立するため、周囲の理解を促すための啓発や院内保育所ネットワーク、病児病後児保育、キャリアアップの支援を推進する。また、日本医師会女性医師支援センターおよび同女性医師バンク事業と協働した活動については、女性医師の復職支援などの事業拡充も視野に入れ、産婦人科における産休・育休中の代替医師を確保するための運用システムの実現を目指す。

医療事故調査制度

 平成27年10月1日に施行された「医療事故調査制度」において、医療事故調査・支援センターに報告すべき医療事故が発生した場合に、医療機関の管理者は、施設の規模に関わらず、速やかにその原因を明らかにするための院内調査を行わなければならない。事故調査の中立性と透明性および公平性が確保され、迅速かつ適正に行えるよう支援するために、本会は「医療事故調査等支援団体(以下、支援団体とする。)」となり、大阪府内の支援団体の連携・調整を図ることを目的に「大阪府医療事故調査等支援団体連絡協議会」を設立した。
 この制度を踏まえて、会員自らが「医師の職業倫理指針」に則って医療事故防止に万全を期す必要がある。本会では医療の安全性確保のため、医療機関における安全対策の推進役となる指導者育成のための研修会や、郡市区等医師会と協同した医療安全に関する取り組みの強化、特に第8次大阪府医療計画の指標として設定される「病院管理者の医療事故調査制度研修の受講割合の増加」についても対応を図っていく。さらには、住民への啓発事業など諸施策について、他の医療関係団体とも連携の下、一層の推進に取り組みたい。

医療DX・ICT化

 クラウドコンピューティングや通信技術の発展によって、ビッグデータの収集・分析が可能になり、医療分野のICT化は新たな局面を迎えている。政府は骨太の方針(「経済財政運営と改革の基本方針2023」)において、医療DXの推進に関する工程表を示し、2023年4月には医療機関と薬局にオンライン資格確認等システムの導入が原則義務化された。2024年秋には健康保険証が廃止され、マイナンバーカードと一体化されることが予定されており、2030年までには医療情報を全国で共有できるシステムの導入や電子カルテの標準化を目指す予定としている。
 いずれの施策も、医療機関における情報のデジタル化や双方向通信を前提にした内容であり、今後、医療機関には一層のICT化が必要になる展開が待ち受けている。このため、ICT施策の推進に対しては、日本医師会や自治体を通じて、医療機関に手厚い支援策が講じられるよう働きかけるとともに、ICTを導入しない医療機関へのサポートにも対策を講じる。
 令和6年度の診療報酬改定の基本方針において、医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進として遠隔医療の推進が挙げられているが、オンライン診療は受診形態に影響を与えるだけでなく、地域医療を一変させる危険性を内包し、さらに営利企業の過度な参入を招来する恐れもある。
 本来、医療は視診・触診・聴診など、医師が対面で患者を診察することで得られる情報を基に適切な診断を行い、治療につなげていくべきものであり、ICTは医療を補完するもので、適切な算定要件が整備され、運用されるよう注視していく。近年では内視鏡や画像診断におけるAIの技術進展は著しく、様々な医療情報を取得した患者からの意見や提言は現実化しつつある。医師も患者との信頼関係を構築する上で、互いに情報共有しながら今後は柔軟な対応が求められることから、この面での会員への周知・啓発を強化していく。
 さらに、日本医師会は厚労省と医師免許証のHPKI機能付きカード型への協議を開始したが、国が方針を逸脱し医師免許の更新制につなげることがないよう充分に注視する。
 医療のデジタル化への移行が進む一方、セキュリティに関する課題は深刻さを増しており、大阪・関西万博の開催を翌年に控えた大阪府内の医療機関がサイバー攻撃の標的となる懸念はさらに高まっている。令和4年10月には大阪でも公的基幹病院がランサムウェアによるサイバー攻撃を受け、電子カルテ等のシステムが利用できなくなる事案が発生した。医療機関を対象としたサイバー攻撃は患者の生命に関わる甚大な被害となる恐れがあり、万全な対策が望まれる。セキュリティ端末を適切に運用するだけでなく、関係者の情報セキュリティに関するリテラシー向上も欠かせないため、日本医師会や警察庁との連携の下、会員の啓発や情報提供に努めていく。
 医療DXにはセキュリティの問題や個人情報の保護等の課題が残されており、その進め方が拙速との疑念も禁じ得ない。また、国が企図している従来の健康保険証の廃止・マイナンバーカードへの一本化も医療現場や患者の意向を充分に配慮したものとは言い切れない。政府の方針の問題点を多面的に考え、医療提供側、患者側双方にとって真に役立つ医療DXを検討していく。
 医療環境はいよいよ厳しく、不透明と言わざるを得ない。また、これまでの大阪府の財政見直しに伴い、本会の財政状況もかつてない程、厳しいものになっている。令和7年には「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに「大阪・関西万博」が開催されるが、サブテーマには「いのちを救う」、「いのちに力を与える」、「いのちをつなぐ」を掲げている。府民が健康で安心できる生活を送るために、医師会としても保健・医療など国民生活の基盤を支える体制づくりをいかなる状況にあろうと遂行しなければならない。同時にそのことが「健康都市大阪」の実現の一助につながると信ずる。そのためにも、医師が自信を持って、安心して診療活動に従事できる環境整備が必須である。この基本を守り、現状の中でできる限りの会務運営に努めることが執行部に課せられた使命と認識している。
(重点項目等は略)