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新生児マススクリーニング検査対象拡大へ

府医ニュース

2024年4月17日 第3069号

2難病の実証事業開始

 新生児マススクリーニング検査(以下、新生児マス)は平成13年度から検査費用が一般財源化され、現在では47都道府県と政令指定都市の計67自治体が事業主体となっている。今は、生まれた新生児のほぼ100%が、20疾患対象の新生児マスを公費で受けている。検査料は無料であるが、採血料と検体送料は自費で自己負担である。脊髄性筋萎縮症(SMA)と重症複合免疫不全症(SCID)の2つの難病は、拡大マスとして39の都道府県や政令指定都市で実施されてきた。こども家庭庁は令和5年度の補正予算に10億円を盛り込んで、モデル自治体を募集し、2つの難病の実証事業を始めた。将来的に全国展開を目指す。
 新生児マスは、フェニルケトン尿症などの5つのアミノ酸代謝異常、メチルマロン酸血症などの7つの有機酸代謝異常、中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症(MCAD欠損症)などの5つの脂肪酸代謝異常、その他3疾患(ガラクトース血症、先天性甲状腺機能低下症、先天性副腎過形成症)の計20疾患である。新生児マスで疾患が見つかれば、早期の治療につながる。フェニルケトン尿症では食事療法で正常に発達、MCAD欠損症では長い空腹状態を避けるだけで低血糖発作による死亡を予防できる。先天性甲状腺機能低下症では甲状腺ホルモン製剤の内服で、正常な発達が得られる。SMAは2万人に1人が発症し、人工呼吸器をつけなければ多くは2歳までに死亡する。治療薬として、スピンラザが平成29年、ゾルゲンスマが令和2年に保険適用となり、発症前の治療で自力歩行も可能になった。SCIDは5万人に1人が発症し、感染症への抵抗力がないので多くは1歳までに死亡する。現在はロタウイルスに対する生ワクチンが生後2カ月で定期接種となっているので、SCIDの検査は必須である。臍帯血移植などでほぼ根治する。
 大阪府内では、すでに2疾患の検査体制が整備されている。大阪市内は一般財団法人大阪市環境保健協会、大阪府内は大阪母子医療センターで検査を実施している。6年3月1日から20疾患の新生児マスに2つの難病の実証事業をあわせて実施。実証事業の実施要件は、①保護者への説明と検査結果を国の調査研究に活用することの同意②国の調査研究と連携・協力③陽性となった場合、保護者への説明やカウンセリング、新生児の治療実施体制整備――などとされている。
 こども家庭庁へのデータ・情報提供は、検査数や陽性者数などの個人が特定されないデータの提供である。国では、全国の実証事業で集められたデータから、▽陽性頻度▽検査精度▽費用対効果▽全国の検査体制整備状況▽治療体制整備状況――などを勘案して、いずれ公費として全国展開される。