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医師・医療関係者のみなさまへ

調査委員会だよりNo.112

新専門医制度のシーリングは医師の偏在是正に有効か

府医ニュース

2024年4月3日 第3068号

 従来の各学会主導の専門医制度は、その認定基準のばらつき、行き過ぎた細分化など問題点が指摘されていた。これに代わり、国民目線で分かりやすい新たな専門医制度を目指して日本専門医機構が設立され、平成30年度から新専門医制度が始まった。その道のりは平坦ではなく、同機構は29年度からの新専門医制度実施を準備したが、地方の行政サイドから待ったがかかった。この制度は、医師偏在をさらに助長するという危惧である。
 政府は医師偏在是正法ともいうべき医療法・医師法の一部を改正し、30年6月に成立させた。その中で専門医研修については、都道府県の意見を聴いた上で、国から同機構に対し、地域医療の観点から必要な措置の実施を意見する仕組みを創設するとされた。その結果、指導医、患者が集中する大阪などの大都市圏の専門医プログラムにシーリング(定員制限)がかかるようになった。地域医療の観点から、地方にもっと専攻医を回せと。
 令和5年10月に実施した大阪府医師会員調査の結果を示す。1230人の回答者の中で、「専門医プログラム定員のシーリングについてすでに知っていた」という設問には、当事者である39歳以下の会員で74.5%が知っていた。対象を勤務医のみの500人に絞ると79.4%が知っていると回答した。「医師の偏在矯正の観点から若手専攻医のシーリングは有効である」への回答は、ほぼ全世代で2割未満だった。シーリングで地方の専門医プログラムに入った専攻医に対して受け入れ先の行政が経済的支援をすべきか、子育て世代の若手医師、特に女性医師への配慮など問題は山積している。「医師の偏在矯正はベテランの専門医をもってなすべきである」という設問には、70歳以上で23.2%と最も高かった。
 今年度の専門医プログラムの選定過程の中で、大阪府で専門医プログラムの専攻医になれず他県に流出した研修医、またシーリングのため目指す診療科を不本意ながら変更した若手医師がいると思われる。医師の地域偏在是正、診療科偏在是正は日本のみならず諸外国でも大きな問題である。しかしながら我が国の医療体制は明治7年の医制以来、自由開業医制が基本である。すなわち、開業の自由と自己の裁量によって国民に医療を供給する開業医の仕組みが我が国の医療提供体制の基礎である。
 行政側には、平成16年に導入された臨床研修必須化で研修医の大都市圏集中が助長された苦い経験がある。今後、この専門医制度のシーリングが医師の偏在是正に有効なのかどうか、詳細な検討・評価を行わなければならない。

文 木島 祥行(堺市)