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医師・医療関係者のみなさまへ

介護保険研修会・主治医意見書作成に関する説明会

府医ニュース

2024年4月3日 第3068号

介護報酬改定や医療介護連携
江澤日医常任理事が解説

 大阪府・大阪市・大阪府医師会主催による令和5年度「介護保険研修会・主治医意見書作成に関する説明会(第2回)」が3月9日午後、府医会館で行われた。当研修会・説明会は、「大阪府・大阪市主治医意見書作成研修事業」の一環として開催。会場とウェブで約360人が参加した。

 高井康之会長は開会あいさつで、6年度トリプル改定に言及。介護報酬では、前回を上回るプラス改定となったが、高齢化の進展により医療・介護を巡る環境は非常に厳しいとし、担い手となる人材の確保などを憂慮した。あわせて、介護サービスの需要が一層高まる中での介護認定審査会における主治医意見書の重要性を語り、講演を通じて要点を再確認してほしいと述べた。

職員の処遇改善へ 報酬、一定の水準確保

 中尾正俊副会長が座長を務め、はじめに江澤和彦・日本医師会常任理事が、「令和6年度介護報酬改定の概要」と題して講演。医療関連の改定項目を中心に、新設項目や変更点を解説した。
 まず、「5年度介護事業経営実態調査結果」を示し、4年度の介護サービス全体における収支差平均が、3年度比マイナスとなった背景の一つは人件費の上昇と指摘。今回の本体プラス1.59%のうち、0.98%は介護職員の処遇改善への充当、残る0.61%は賃上げ税制を活用しつつ介護職員以外の処遇改善を実現できる水準と説明した。あわせて、春闘での連合の要望にも注視したいとの考えを示した。
 次いで、新設された「介護職員等処遇改善加算(Ⅰ~Ⅳ)」を詳説した。それぞれ、(Ⅰ)経験・技能を有する職員の充実(Ⅱ)総合的な職場環境改善による職員の定着促進(Ⅲ)資格・経験に応じた昇給の仕組化(Ⅳ)介護職員の基本的な待遇改善・ベースアップなど――を趣旨にこれまでの加算が一本化された。職種による配分ルールがないため、事業所内で柔軟な賃金配分が可能とし、算定要件を列挙した。また、「医療と介護の連携推進」が改定のポイントと述べ、「高齢者施設等における医療への対応強化」と「協力医療機関との連携強化」に係る項目を詳述した。介護保険施設や高齢者施設に対し、連携体制を常時確保した協力医療機関の指定の義務化や、コロナ禍での対応を踏まえた、医療機関と連携した感染症対応への評価などを説示。その上で、医療と介護が連携し、介護側から気軽に相談できるような顔の見える関係を築くことが医学的管理に有用であり、新興感染症対策にもなると結んだ。

意見書作成時は十分なアセスメントを

 続いて、林正則氏(府医介護・高齢者福祉委員会委員)が、「主治医意見書記入の留意点」と題し、要介護認定の流れや、意見書が果たす役割を伝えた。意見書作成時には、利用者を十分にアセスメントし、介護に関連する生活機能や医療の情報を分かりやすく記入するようアドバイス。さらに、利用者の状態像をより理解する上で、「特記すべき事項」欄が大切とし、▽事項がない場合▽介護認定審査会委員やケアマネジャーへの意見▽連絡事項――の記入例を紹介した。加えて、作成にあたり発生しやすい不備を挙げ、注意を呼びかけた。また、円滑な医療介護連携がより良い医療の提供につながるとし、普段から「介護の手間」を考えながら診察することを推奨した。