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少子化対策関連法案を閣議決定

府医ニュース

2024年3月20日 第3066号

「支援金制度」丁寧な説明を

 政府は令和6年2月16日、「異次元の少子化対策」の具体化に向け、子ども・子育て支援法などの改正案を閣議決定した。6年度からの3年間で集中的に取り組む「加速化プラン」を実現させるためのものだ。財源として、歳出改革で1.1兆円、支援金で1兆円、既定予算の活用で1.5兆円の合計3.6兆円が見込まれている。改正案は医療保険料と併せて徴収する新たな「支援金制度」の創設が柱である。今通常国会に提出され成立する見通しである。
 児童手当の拡充は今年10月1日から開始予定で、高校生まで対象を拡大、第3子以降への給付を倍増(月3万円)とし、所得制限は撤廃する。2カ月に一度の年6回支払われる。11月1日からは児童扶養手当の第3子以降の加算額の引き上げも始まる。
 7年4月1日からは、「両親ともに育児休業を取得すれば給付を手取り額の実質10割にする」「子どもが2歳未満の時短勤務者への給付の創設」「出産・子育て応援交付金10万円の恒久化」、そして特別会計「こども金庫」を創設し関連予算の財源を一元管理する。
 8年4月1日からは「こども誰でも通園制度」の全自治体での実施、支援金制度を創設する。支援金は、8年度(6千億円)、9年度(8千億円)、10年度(1兆円)で、保険加入者一人当たり月平均約500円の負担となる。政府は全世代で子育て世帯を支える方針を示しており、75歳以上の後期高齢者は8%を、それ以外の世代で92%を負担する。
 岸田文雄首相は、約500円の負担を求めながら、「実質的な負担は生じさせない」と主張している。理解が困難である。約500円の負担についてNHKの調査では、「妥当だ」20%、「妥当ではない」31%、「支援金制度自体に反対だ」33%、「わからない」16%であった。64%が不満を持っている。岸田首相は「歳出改革と賃上げで、実質負担増にはならない」と言う。6年度診療報酬改定で、当初財務省は診療報酬本体1.1%削減案を提案、それで支援金の捻出を考えていたかもしれない。しかし、実際には本体0.88%増、全体として0.12%減となり、これによる捻出はできない。
 保険料率は同じであったとしても、賃上げがなされた分、労働者の負担は増える。一方で、賃上げの恩恵を受けているので「負担増とみなさない」といった詭弁を弄している。また、所得や保険の種類によっては「500円以上になることもある」と、加藤鮎子こども政策相も認めている。
 このような理解に苦しむ説明を繰り返すばかりなので、支援金制度に支持が得られないのではないだろうか? 岸田首相は詭弁を弄さず、「少子化対策の重要性と未来への投資」として国民に説明し、真摯にお願いをすれば、もう少し支持も得られるかもしれない。