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医師・医療関係者のみなさまへ

ギャンブル等依存症簡易介入マニュアル普及研修

府医ニュース

2024年3月20日 第3066号

かかりつけ医の支援が重要に

 平成30年に公布された特定複合観光施設区域整備法(IR整備法)を受け、大阪府は「大阪IR(Integrated Resort)」を推進し、大阪・関西の持続的な経済成長を目指す構えだ。一方で、カジノ併設による「ギャンブル依存症」も懸念され、その対策が求められている。大阪府医師会は2月29日午後、大阪府・大阪市の共同事業により「ギャンブル等依存症簡易介入マニュアル普及研修」をウェブとの併用で実施。関係者を含め約150人が参加した。

 阪本栄・府医副会長が座長を務め、開会あいさつ。オンラインカジノなど手軽なギャンブルが若年層を中心に広がっており、依存症の早期発見・対応が求められると言及。かかりつけ医による簡易介入や情報提供が必要として、本研修の意義を説いた。

依存症は疾患 治療が必要

 入來晃久氏(大阪精神医療センター司法精神医学診療部診療主任)が、「ギャンブル等依存症の基礎知識」と題して講演した。まず、アルコール・薬物・ギャンブル・ゲームなどへの依存は、「脳内に共通したメカニズムが見られる」と説明。心理的苦痛にうまく対処できていない状態であり、説教や叱責などの正論は「逆効果で危険」だと強調。その上で、医療機関での治療が必要と語った。
 また、ギャンブル問題の特徴として、「嘘と借金、自殺念慮」を指摘。借金については専門家へつなぐとともに、背景にある「生きづらさ」を理解し、時間をかけて支援することが大切と加えた。

マニュアル活用と簡易介入のコツ

 続いて、簡易介入マニュアルの活用法が示された。
 稲田泰之氏(稲田クリニック院長)は、「ギャンブル等依存症簡易介入マニュアル」を詳説。対象は、ギャンブル等を行い、▽不眠・食欲不振・胃痛などの訴えがある▽不安症状や希死念慮がある▽学校や仕事に行けていない▽経済面で不安がある――方で、スクリーニングテストからの取り組みを勧めた。
 介入の流れでは、ギャンブルを減らす動機付けを高め、行動のセルフコントロールを目指すと説述。リーフレットや専門サイトを活用したコミュニケーションを促した。
 和気浩三氏(新生会病院長)は、「アルコール問題のある人への簡易介入マニュアル」を取り上げた。アルコール関連の健康障害や社会的損失は深刻であり、早期介入の重要性を訴えた。
 次に、自院での治療成績を示し、「約8割は外来レベルで対応」と報告。治療介入の重要性を改めて主張した。また、AUDIT(Alcohol Use Disorders Identification Test)の点数類型ごとの介入例も紹介。「危険の少ない飲酒群」「危険な飲酒群」「アルコール問題の介入が必要な群」それぞれの事例を説明した。あわせて、保健所でも相談機能を有しており、必要に応じて活用してほしいと結んだ。