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時事

第8次大阪府医療計画(案)

府医ニュース

2024年3月6日 第3065号

病床削減は備えにつながるのか

 大阪府医療計画は、医療法第30条の4に基づく「医療計画」であり、5疾病(がん・脳血管疾患・心血管疾患・糖尿病・精神疾患)5事業(救急医療・災害医療・感染症・周産期医療・小児医療)および在宅医療を中心に、医療体制に関する大阪府の施策の方向を明らかにする行政計画である。国が策定した「第8次医療計画」に基づき地域の特性を盛り込み計画される。
 第3章「基準病床数」では、(1)基準病床数は、病院および診療所の病床の適正配置・過剰な病床数を抑制することを目的に、医療圏ごとの病床整備の基準として、医療法に基づき、病床の種類ごとに定める(2)基準病床数は、国の定める算定方法により、一般病床および療養病床(2種類の病床をあわせて算定)は二次医療圏ごとに、精神病床、感染症病床、結核病床はそれぞれ三次医療圏(大阪府)で定める(3)既存病床数は、都道府県が使用許可した病床数(許可病床数)から、利用者が限定される職域病院等、特定の者が利用する病床を除いた病床数をいう(4)既存病床数が基準病床数を超える地域では、病院および有床診療所の開設、増床等は原則できない――と記載されている。
 南河内二次医療圏の藤井寺市民病院(98床)が令和6年3月末に閉院、7年には近畿大学病院(800床)が堺二次医療圏に移転することが決まっている。現在、南河内二次医療圏は、全体で765床が基準病床数より上回っているが、近い将来、これら病院の閉院と移転により、逆に、133床基準病床数を下回ることとなる。この基準よりも下回った病床数の増加計画については、触れられていない。
 新型コロナウイルス感染症のパンデミックでは、大阪府は、都道府県人口あたりの死亡者数がワーストワンを長期間記録した。そして南河内二次医療圏では、第4波パンデミックにおいて、精神疾患患者の感染者の搬送先がなく、精神科病床でクラスターが発生するなど、早期に大学病院はじめ様々な科の医療が逼迫する事態となった。
 地域住民は、自分の住みたいところに住む権利を有する。緊急災害時のみならず平時に余裕のある医療体制が構築されなければ、地域はその権利を満たすことはできない。大阪府の第8次医療計画が府民にとり、新興感染症や災害にも「備え」が十分な医療体制の構築につながることを望みたい。(葵)