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医師・医療関係者のみなさまへ

令和5年度 障害者総合支援制度と医師意見書に関する説明会

府医ニュース

2024年3月6日 第3065号

「支援の量」を意識し具体的な記載を

 「障害者総合支援制度と医師意見書に関する説明会」が令和5年12月21日午後、大阪府医師会館で開催された。本説明会は、大阪府と府医の共催で実施。ウェブとの併用により120人が受講し、障害福祉制度や医師意見書記載時の留意点などが伝えられた。

 中村芳昭氏(府医介護・高齢者福祉委員会委員/大阪精神科診療所協会理事)が座長を務め、冒頭、中尾正俊副会長があいさつ。引き続き、橘俊宏氏(大阪府福祉部障がい福祉室障がい福祉企画課制度推進グループ課長補佐)が「障がい者総合支援制度における障がい支援区分と医師意見書について」と題して講演を行った。
 橘氏はまず、障害福祉制度に関する最近の動向を解説。厚生労働省・令和2年調査では、障害者の総数は1160.2万人で増加傾向にあり、人口の約9.2%に相当するとした。在宅生活者が95.8%とほとんどを占めており、障害福祉サービス関係予算額は15年間で3倍以上になると説明した。
 次に、「障害支援区分」について詳述。障害者総合支援法では、「障害者等の障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示すもの」と定義されるとした。また、「障害の程度(重さ)」は、「必要とされる支援の量」と必ずしもイコールではないと強調。必要とされる標準的な支援を導くことが重要だと語った。さらに、障害支援区分は市町村でのサービスの支給決定時のほか、①報酬単価の多寡・職員配置②市町村に対する国庫負担基準額③利用できるサービスの要件――にも用いられるとした。
 医師意見書は、▽基本情報▽傷病に関する意見▽身体の状態に関する意見▽行動および精神等の状態に関する意見▽特別な医療▽サービス利用に関する意見▽その他特記すべき事項――の7項目で構成されると説明。障害支援区分の認定手続きでは、一次判定(コンピュータ判定)・二次判定(市町村審査会における審査判定)の根拠となる重要な情報であるとし、記載漏れがないよう注意を促した。中でも、障害の直接の原因となっている傷病名や傷病の経過、特記事項は、二次審査において重要な判断材料になると指摘。心身の状態や支援の必要性など、分かりやすく具体的に記載するよう求めた。
 続いて、障害者差別解消法における合理的配慮の提供に言及。「不当な差別的取扱い」ならびに「合理的配慮の提供」について、具体例を挙げながら説示した。また、大阪府では平成28年4月より「大阪府障がい者差別解消条例」を施行し、差別解消に取り組んでいると紹介。医療機関でも「障害者差別解消に向けた対応に協力してほしい」と呼びかけた。

「医師意見書」記載上の留意点

 李利彦氏(府医介護・高齢者福祉委員会委員/大阪精神科診療所協会副会長)が「医師意見書書き方のポイント」と題して登壇した。
 まず、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築について概説。また、障害者の症状の安定性や傷病の経過を聴取する工夫として、労災保険で使用される『日常生活状況報告書』などの利用を勧めた。
 続いて、医師意見書の記載の留意点として、「行動および精神等の状態に関する意見」の項目を重点的に説明。「精神症状・能力障害二軸評価」「生活障害評価」は特に判断が難しいと述べ、自身の経験を踏まえながら判断基準を示した。加えて、高次脳機能障害の症状を挙げ、医師意見書への記載のポイントを伝えた。
 最後に、「特記すべき事項」の記載例を紹介。「本人の生活のしづらさ」を具体的に記載すると分かりやすいと結んだ。

障害を理由とする差別のない社会を目指す
中尾副会長あいさつ

 平成25年4月に「障害者総合支援法」が施行され、それまで「制度の谷間」に置かれていた難病の方々が障害福祉サービスの対象となり、対象疾病は366疾病まで拡大されている。
 さらに、28年4月には「障害者差別解消法」が施行された。障害を理由とする差別のない社会を目指して、「不当な差別的取扱いの禁止」や「合理的配慮の提供」などが医療機関を含めた社会全体に求められている。
 大阪府は全国に先駆けて、令和3年4月に「大阪府障害を理由とする差別の解消の推進に関する条例」を改正し、それまで努力義務とされていた「事業者による合理的配慮の提供」を義務化した。6年4月には法律により全国的に義務化されるため、医療機関も改めて日常診療の中で実行していかなければならない。
 現在、国は6年度のトリプル改定に向け、障害者の高齢化に対する課題として「高齢者施設・障害者施設における医療」を挙げている。人材不足等を含めた対応が急務となっている。
 医師意見書は、介護給付等の決定の際に、「知的障害や精神障害など多様な障害の特性、その他の心身の状態や支援の度合い」が総合的に反映されるものである。区分認定における一次判定および二次判定では、非常に重要な役割を果たしている。
 本説明会が、障害者施策の理解と医師意見書作成の一助となることを期待したい。