TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

在宅医療における死因診断に関する研修会

府医ニュース

2024年3月6日 第3065号

在宅看取り時の必須スキル

 大阪府医師会は令和5年12月1日午後、在宅医療における死因診断に関する研修会を開催した。当研修会は大阪府在宅医療総合支援事業の一環として実施。医師など在宅医療に携わる多職種が、会場とウェブで約150人受講した。

 岡原和弘氏(府医介護・高齢者福祉委員会委員長)が座長を務め、前川たかし理事が開会あいさつ。最期まで個人の尊厳を重視した医療提供を行う上で、「在宅看取り」の充実が望まれており、当研修会がその一助になればと力を込めた。
 引き続き、「在宅医療における死因診断に関する研修会――死後診察とは」と題し、松本博志氏(大阪大学大学院医学系研究科法医学教授)が講演した。在宅における死因診断は、多死社会の到来と在宅医療の進展に伴って需要が増えると言及。遺族にとっては在宅看取りの締めくくりと語り、医師による適切な遂行を求めた。
 まず、死因診断に係る法令を確認した。死亡診断書は、死後24時間以内で生前診察していた傷病による死亡の場合に加え、「死後診察」をすれば、死後24時間を超えた場合も発行可能だと前提。死亡確認を5分以上あけて2回行うほか、▽全身▽頭部・頸部▽左右眼球・左右上下眼瞼結膜▽鼻腔・左右外耳道・口腔内――などに対する死後診察時の所見取りを詳説した。様々な「死体現象」が現れる中での診断は難しいが、科学性をもった診断が死因診断の精度を高めると助言。また、所見取りにおける記録の重要性も説いた。
 さらに、①死斑②死後硬直③角膜の混濁④体温の低下――といった死体現象について、時間経過ごとの特徴や疑われる事象を列挙。家族の説明との整合性や現場状況、気温なども考慮することで、死後経過時間の推定が可能だと解説した。加えて、急死・損傷・火災・溺水時における「生活反応」の外部所見を説示した。最後に松本氏は、死因究明学は「次のいのちを守る学問」と述べ、受講者の一層の技術向上に期待を寄せた。