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能登半島地震「息の長い支援」へ

府医ニュース

2024年2月28日 第3064号

本部・支部機能の連携が大切

 1月1日に発生した能登半島地震にJMAT(日本医師会災害医療チーム)大阪先遣隊として被災地に赴いた。詳細は本紙で既報(第3061号/1月31日付)の通りである。その後、数回の中断はあったものの現在JMAT大阪は一つのラインを組んで派遣を継続している。
 現地での経験も踏まえ、帰阪後も事務局と一体となり後方支援を続けている。今回は、JMAT大阪先遣隊として被災地で活動し、そして後方支援する中で気付いた点を取り上げたい。
 やむを得ない部分もあるが、情報の伝達が不十分であり、本部・支部がうまく機能していなかったと感じた。我々が支援に出向いた際、どこに支援に行くのか、支部でも何隊来るのかさえ把握できておらず、「当日にならないと分からない」といった状況であった。我々先遣隊は志賀町の富来地区の巡回に当たった。そして、当地での活動を次のA班へ申し送りをしたが、翌日A班は穴水地区への派遣となった。
 JMAT大阪は金沢市に拠点を構えている。不慣れな雪道での運転が必要になるため、移動に関しては地元のタクシー会社に依頼した。働き方改革の影響で拘束時間は15時間までときつく言われており、残念ながら穴水より北部への支援は道路状況のこともあり断念せざるを得なかった。その後は金沢以南の支援に当たっている。
 金沢以南の状況は1.5次、2次避難所が混乱の様相を呈している。新しい避難所が見つかったり、本来は自立している方が対象にもかかわらず動けない方がいたり、民泊の施設に避難していたりと想定とは違う状況があるようだ。さらに2月末頃には契約の切れるホテルが、北陸新幹線の延伸に合わせて本来の観光へシフトするため、これから避難所の統廃合が進むと予想されている。
 本欄を執筆している時点では、北部の穴水町、能登町では医療ニーズがなくなったため、JMAT自体の派遣がゼロとなっている。東日本大震災の時には地域から医療機関がなくなった地区もあると聞いている。その教訓で今回は地域の医療機関支援も方針の一つとなっている。道路や断水の状況は刻々と変化している。その中での支援活動となるが、支援の必要量と供給量のバランスも常に変化している。本部・支部の差配に大変な苦労があることは想像に難くない。
 日医の災害委員会では本部機能、業務調整を担うロジスティクス機能が課題とされた。私も同意見である。とは言え、息の長い支援が必要という現地および日医の方針に沿って、3月もJMAT大阪の派遣を続けると決定した。一方でまだ枠に余裕があるのが現状である。来る南海トラフ等を想定して経験を積んでおくことも重要だろう。私も支援に行ったことで、今まで以上に災害が自分事としてとらえられるようになった。同志が増えることを望む。