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医師・医療関係者のみなさまへ

緩和医療に関する研修会(シリーズ⑭)

府医ニュース

2024年2月28日 第3064号

在宅医療における緩和ケアの確立

 大阪府医師会は11月15日午後、令和5年度緩和医療に関する研修会(シリーズ⑭)を開催。当日は、府医会館とウェブにより、会員や医療関係者ら160人が受講した。

 中尾正俊副会長は開会あいさつで、がん患者やその家族が住み慣れた地域で自分らしく過ごせるよう、緩和ケアの提供体制をより一層確立したいと力を込めた。
 研修会は大平真司理事が座長を務め進行。はじめに、所昭宏氏(近畿中央呼吸器センター心療内科長)が、「在宅緩和ケアにおける精神症状への対応」と題し、がん患者への対応を中心に解説した。コロナ禍を機に、終末期の在宅医療が注目されており、より全人的・包括的なアセスメントが求められると前置き。まず、対応の備えとして、▽適応障害▽うつ病▽せん妄――といった、高頻度の精神症状への理解を促した。特に診断告知後は気持ちのつらさなど精神心理的ストレスが高まるが、患者の心身の状況を測定しながら、多職種が連携し、精神心理的サポートや投薬によるフォローが重要と説明した。また、臨死期の9割が経験する「せん妄」は、見落とされやすく悪影響をもたらすと指摘。せん妄の関連因子として「準備因子」「促進因子」「直接原因」を列挙し、予防や治療を説示した。あわせて、ガイドラインの整備に触れ、活用を促すとともに、緩和ケアに係る知識の整理や保険点数への対応に向けて、研修会の定期受講を推奨した。
 続いて、「在宅緩和ケアにおける呼吸困難への対応」と題し、池永昌之氏(淀川キリスト教病院緩和医療内科主任部長)が講演した。まず、呼吸困難を「呼吸時の不快な感覚」と定義。多くの患者に起こるが、明確な治療方法はまだ十分ではないと明かした。代表的な非薬物療法として「酸素療法」を挙げ、一時的に苦しい時だけ吸入するのではなく、安静時や労作中の持続的な吸入が有意と示した。そのほか、高流量鼻カニューラ酸素療法や送風療法を紹介した。薬物療法では、最も推奨度の高いモルヒネやそれに続くオキシコドンなどを詳説。効果と有害事象を慎重に評価するよう説いた。さらに苦痛が改善されず「鎮静」を行う時は、患者の意識レベルや身体機能への影響が少ない方法を優先するよう訴えた。加えて、患者が希望する人生の最終段階の医療・ケアについて、できるだけ早い時期に家族で話し合う機会を持ってほしいと呼びかけた。
 最後に、英国ホスピスの創始者の言葉である「最後の数時間に起こったことが、残される家族の癒しにも悲嘆の回復の妨げにもなる」を引用。緩和ケアは、遺族にとっても大切であり、在宅でもしっかりとした苦痛緩和や看取りができるよう尽力したいと結んだ。