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医師・医療関係者のみなさまへ

調査委員会だよりNo.110

府医ニュース

2024年2月7日 第3062号

医師の働き方改革 その2 若手勤務医の観点から
文 木島 祥行(堺市)

 昨秋に実施した府医会員意見調査の結果から、「医師の働き方改革 その1」(本紙第3056号/令和5年12月6日付)では、病院長の観点から自院の宿日直体制について、労働基準監督署からの許可の有無が地域医療に大きな影響を与え得ることを報告した。
 今回は、病院勤務医の会員514人(男性368人、女性127人、無回答19人)の観点から、今年4月に迫った医師の働き方改革についての解析結果を報告する。年齢階層の最頻値は男性は50代、女性は40代であった。
 まず、6年4月から医師の時間外労働の上限が年間960時間に規制されることを「知っているか」の設問について、39歳以下は8割強、50~69歳では9割強の会員が知っていると回答した。
 「知っている」と回答した層を対象に行った、医師の働き方改革の「メリットは何か」という複数回答の設問では、39歳以下の世代で「医師が十分な休養を取れる」が65.2%と最多。次いで「より安全で良質な医療を届けられる」が47.2%、「勤務医の過労死が減少する」が33.7%であった。この傾向は70歳以上のグループを除き、全世代にほぼ共通であった。
 そのデメリットについての複数回答の設問では、39歳以下のグループで「いわゆるサービス残業が増加する」が84.3%と最多。次いで「残業の上限制限で副業(外勤)が制限される」が58.4%であった。39歳以下のグループは、臨床研修医、専門医プログラムの専攻医を多く含むと考えられるが、今回の働き方改革でいわゆる自己研鑽として労働時間が過小評価されるという危機感がうかがえる。また、副業も労働時間として合算されるため、主勤務先での残業時間が上限に達すれば、副業(外勤)ができなくなり、例えば子育て世代の専攻医が経済的困窮に陥る恐れがある。
 全国の病院、有床診療所へ日本医師会が昨年10月に行った調査でも宿日直体制の維持が困難と回答した施設が約3割に上るという。宿日直許可の取得、自己研鑽の拡大適応などの、いわば小手先の働き方改革で生き残ろうとする病院は、今後、若手医師に選択されるのだろうか? 24時間切れ目のない医療提供体制を目指すためには、異次元の医師の充足と救急医療を担う施設の集約化は恐らく避けて通れないだろう。これこそが医師の働き方改革の本丸である。