TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

時事

第573回中医協総会開催

府医ニュース

2024年2月7日 第3062号

在宅医療の課題と論点

 令和5年12月15日に第573回中央社会保険医療協議会(中医協)総会が開催され、在宅医療の議事も行われた。まず、課題と論点として、①包括的支援加算等の患者の特性に応じた訪問診療の評価のあり方についての考え方②頻回訪問加算について、現在の算定状況等を踏まえ、評価のあり方についての考え方③在医総管・施設総管の算定状況や施設入居者の患者の状態、一部医療機関の訪問診療の実施状況を踏まえ、患者の状態に応じた適切な評価の考え方――等が示された。なお、在宅医療の体制については、都道府県が策定する医療計画に、地域の実情を踏まえた課題や施策等を記載する。国は「在宅医療の体制構築に係る指針」を提示し、都道府県が確保すべき機能等を示している。
 在医総管・施設総管においては、比較的重症な患者から軽症な患者まで治療が行われていることから、患者の状態等に応じた評価を実施している。訪問診療を行っている患者の要介護度については、要介護度が高いほど診療時間が長く、要支援1・2の平均値14.77分に比較して、要介護1で16.40分、同2で17.19分、同3で17.22分、同4で18.39分、同5で18.63分であった。また、認知症高齢者の日常生活自立度については、Ⅳ(平均値17・04分)やM(同19.27分)の患者はⅡ(同15.16分)やⅢ(同16.05分)の患者より診療時間が長かった。さらに、点滴・注射(インスリンを含む)を受けている患者(平均値21.91分)は、受けていない患者(同17.73分)と比較して、診療時間が長い傾向にあった。同様に、創傷処置を受けている患者(平均値22.67分)は受けていない患者(同17.83分)と比較して診療時間が長い傾向にあった。経口麻薬を投与されている患者(平均値27.64分)は投薬のない患者(同17.80分)と比較して、診療時間が長い傾向にあった。訪問診療の対象となる病名と1回の訪問診療に係る診療時間を比較すると、悪性腫瘍の患者(平均値24.6分)は他の疾患の患者(同13.0~19.8分)と比較して診療時間が長くなる傾向があった。
 医療機関ごとの在宅患者訪問診療料の算定回数と施設総管の算定割合では、訪問診療が月500件以上の医療機関について、医学総合管理料のうち、施設総管の算定割合を見ると、在宅患者訪問診療料の算定回数が月1000回以上の医療機関の多くは施設総管の算定割合が80%以上であった。また、80%以上の群と80%未満の群で比較すると、80%以上群ではターミナルケア加算の算定回数が少なく、往診の算定回数も少なかった。さらに、主として訪問診療等を実施する診療所について、その他の医療機関と比較して在宅患者訪問診療料の算定回数は多く、施設総管の割合も多い傾向にある一方、往診料の算定回数・ターミナルケア加算の算定回数は少ない傾向にあった。在宅患者訪問診療料の算定回数が月500回以上の医療機関について、訪問診療の頻度が平均4回/月を超える医療機関が一定数(4.3%)存在し、平均4回/月未満の医療機関と比較してターミナルケア加算および往診料の算定回数が少なかった。
 以上の特別調査結果より、患者の状態に応じ、よりきめ細かな評価を実施する観点から、要介護度および認知症日常生活自立度に関する包括的支援加算の対象患者の範囲について、見直しを行ってはどうか。また、実態を踏まえて、▽麻薬の経口投与を行っている患者について、包括的支援加算の対象患者に加えてはどうか▽訪問診療の算定回数が多い医療機関の一部において、往診や看取りの実績が少ない傾向であることを踏まえ、効率的に在宅医療を提供している在支診等の要件を整理してはどうか▽患者一人当たりの訪問診療の頻度が高い医療機関における、複数回の訪問診療に関する評価を見直すことについてどのように考えるか――等の論点が示された。かかりつけ医が患者を切れ目なく診て行くことを支援して評価する、簡便で分りやすい診療報酬制度への改正を期待するとともに、在宅版DPCとも言える制度の検討も必要と考える。
(中)