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府医ニュース

2024年2月7日 第3062号

 ◆美作国の豪族、漆間家の後継ぎであった勢至丸が9歳の時、父親の時国が夜討ちに遭う。深い傷を負った時国は亡くなる直前、「決して人を恨むな。仇討ちを考えれば恨みが恨みを呼ぶ。仏の道に入り修行に励め」と勢至丸に遺言した。勢至丸とは後に浄土宗を開宗した法然上人である。
 ◆法然の時代、天然痘の大流行、安元の大火、治承・寿永の乱、養和の大飢饉、元暦の大地震と次々に天災地変と戦乱に見舞われた。法然は念仏を称えることですべての人々が救われる「専修念仏」を説き、衆生救済に尽くした。
 ◆平成以降、相次ぐ天災、低迷する経済、世界中に勃発する戦乱と、絶えない不安と脅威の暗澹たる状況は法然の時代に重なる。現代の衆生救済とは何なのか。国に救いを念じても叶うことはなく、おそらく自助への悟りへと導かれるだけだ。
 ◆今年は浄土宗の開宗850年にあたる。その年始めは能登半島地震という無慈悲な天災に遭ったが、この後は被災地の一刻も早い復興と安寧な一年であることを念じておく。南無阿弥陀仏。(誠)