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時の話題

在宅医療の体制構築にかかる指針

府医ニュース

2024年2月7日 第3062号

連携の拠点と積極的医療機関

 第8次医療計画(2024年度~29年度)では、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の流行により浮上した地域医療の課題および超高齢社会の到来と多死社会に向けた在宅医療の体制構築を図っている。コロナ流行初期の地域医療の混乱から、政財界からは「かかりつけ医制度が必要」との圧力が高まったが、日本医師会は「かかりつけ医機能」を強調し、登録制ではなく、面で支えることを提唱してその圧力を押し返した。この「連携の拠点」を司令塔として、積極的医療機関と連携する体制はまさに日医が提唱する「かかりつけ医機能を面で支える」ことを具現化するものである。
 「連携の拠点」に求められる事項は、①多職種関係者会議の開催②多職種関係機関等との調整業務③多職種連携による24時間体制の構築と情報共有の促進④人材育成⑤地域住民への普及啓発――とある。一方、積極的医療機関に求められる事項は、▽夜間休日急変時の診療支援▽在宅患者の多職種による支援体制作り▽在宅医療現場での研修実施(同行訪問事業)▽各機関のBCP(事業継続計画:Business Continuity Plan)策定および地域版BCPの策定と共有▽地域包括支援センターと協働で地域住民へのサービス等の情報提供▽急変時の受け入れ(入退院支援)――である。
 大阪府医師会は、「連携の拠点」に関しては、郡市区医師会(以下、医師会)がその役割を担うよう推奨している。現在の医師会の役割は、研修会の開催、地域住民への啓発活動、市町村事業の窓口(予防接種事業、学校健診事業、医療・介護・福祉連携事業等)、日医や府医からの情報・連絡事項の周知、会員の福利厚生等だ。都道府県や市区町村は補助金を出すだけでなく、医師会と協働で司令塔の役目を果たすことで在宅医療体制の構築が実現できると考える。保健所は、市町村と医師会の間で調整役となる。現在、ほとんどの医師会は正規職員が1~2人程度であり、この事業を受けるには、相応の行政からの支援が必要である。
 積極的医療機関に関しては、地域の在宅支援診療所(病院)や地域医療支援病院、紹介受診重点医療機関が想定されるが、歯科医院、薬局、訪問看護ステーション、介護サービス事業所、地域包括支援センターとの連携も必要となる。これらの連携には、医師会も含む地域医療連携ネットワークが必要となる。24~30年度をめどに、国は電子カルテの標準化を進め、3文書6情報の閲覧が医療機関相互で円滑に進むことを目指している。他医療機関での急変時受け入れや診療支援が容易になるとの触れ込みであるが、懸念も残る。
 医師会は連携の拠点となり、司令塔としての機能が担えるか試されている。失敗すれば、再びかかりつけ医の登録制度の圧力が浮上するかもしれない。