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医師・医療関係者のみなさまへ

令和5年度HIV医療講習会

府医ニュース

2024年2月7日 第3062号

HIV感染症流行の終焉に期待

 大阪府医師会はエイズ予防財団の委託事業として、令和5年11月1日午後、府医会館でHIV医療講習会を開催した。当日は会場とウェブのハイブリッド形式で実施され、約60人が参加した。

 開会にあたり、宮川松剛理事があいさつ。本講習会はHIVに関する知識の伝達および啓発を行い、地域における円滑な連携推進と医療環境の整備を目的にしていると述べ、かかりつけ医が専門医療機関と連携してHIV感染者を診ていく必要があると強調。また、梅毒患者も急激に増加しているとし、性感染症について広く学び日常診療にいかしてほしいと呼びかけた。
 講習会は、白阪琢磨氏(府医感染症対策・予防接種問題検討委員会委員長)が座長を務め、まず「HIV診療の最新トピックス」と題して、渡邊大氏(大阪医療センター臨床研究センター・エイズ先端医療研究部長)が講演。渡邊氏は、HIVとAIDSの違いや感染経路を示したほか、ウイルス量は感染直後の1~3週間で増加した後、急激に減少するが、その後5~10年で再び増加しAIDSを発症すると説述した。HIV療法については、血中HIV―RNA量を検出限界未満で維持することが目標であると強調するとともに、新たに登場した持効性注射剤を紹介。毎日服用する必要がないため、飲み忘れの心配がないなどのメリットがある一方、治療失敗のリスクや、副作用が出現した場合に中止しても体内から容易に除去されないなどの問題点もあると指摘した。さらに、「U=U(undetectable equals untransmittable)」を紹介。U=Uは、検出限界未満の状態を6カ月以上維持していれば、パートナーを性感染させるリスクがないことを明言することによってHIV陽性者に架せられたスティグマを低減するメッセージであり、渡邊氏はこのメッセージの広がりとHIV感染症流行の終焉に期待を寄せた。
 次に、古林敬一氏(そねざき古林診療所長)が「性感染症のトピックス」と題して登壇。令和5年のトピックスとして、エムポックスの国内発症が認められたことを挙げ、症例写真を示しつつ解説を加えた。その上で、単純ヘルペスと症状が似ており判別が難しいが、MSM(Men who have sex with men)でなければエムポックスの確率は格段に下がるため、MSMかどうかの確認は診断を行う上で非常に重要だと語った。また、HIVについても言及。簡便な治療の確立によって感染しにくくなっており、4年の大阪府の新規感染者が100人未満であったと明かし、減少傾向にあると述べた。一方で梅毒患者の急激な増加を問題視。4年1月に国内で発売された筋注製剤ステルイズを紹介するなど、治療法についても説示した。