TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
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時事
府医ニュース
2024年1月31日 第3061号
マイナンバーカードの取得はいまだ「任意」である。だが、令和5年12月22日、岸田文雄首相は6年12月2日をめどに従来の保険証を廃止し、マイナ保険証に切り替えるとした。健康保険証を廃止せずとも医療DX推進は可能なはずである。むしろ、保険証自体が不具合の不安を抱えるマイナ保険証のバックアップになり、私達現場の人間の安心感につながっている。
それでも、政府は医療のデジタル化の推進と、普及率が低迷していたマイナカードの取得が加速することを理由に健康保険証を廃止する方針を変更しなかった。
COVID―19感染症患者に対し、当院では一般患者の導線と隔離した院外診察室で、受付、診察、会計という一連の行為を行っている。5類になったとは言え、狭い待合室にハイリスク患者を多く抱える診療所では、通常の導線を避けて発熱外来を行っているところは少なくない。
そのような発熱外来において、マイナ保険証のみで受診をする場合、院内のカードリーダーを使用することはできない。よって、その場で正しい資格確認と会計処理を行うことができず、①後日、マイナンバーカードによる資格確認と精算、もしくは ②被保険者資格申立書の提出によって自己負担と公的負担分の請求が可能となる(③患者のスマホ上のマイナポータル情報を確認)。しかし、①も②も、従来の保険証受診と比べ、発熱外来時の手間の緩和には決してつながらない。今までその場でできていた感染症患者の精算が、患者による書類記載や、後日の時間外請求業務という手間をも生み出してしまう。
政府は昨年11月、ポストコロナ医療体制充実宣言を出した。その中で「感染症の流行初期(発生公表から3カ月程度)の体制として、全国で1.9万床の確保病床、1500機関の発熱外来等を確保」「マイナ保険証の利用を促進することで、感染症危機も含めて、全国いつどの医療機関等にかかっても、切れ目なくより質の高い医療を提供することを可能とする」と感染症対応外来の充実とマイナ保険証利用促進に触れた。
しかし、実際は、今なお導線を分けた発熱外来を継続している医療機関としては、マイナ保険証での来院は、医療スタッフの労働負担増、そして、何よりも患者がスムーズに受診できないという問題が生じている。訪問診療等におけるオンライン資格確認、つまり、モバイル端末を用いての資格確認方法が予定されているが、現状ではモバイル端末の使用は、あくまで訪問診療の現場に限られている(1月18日現在)。これは、新興感染症に備えた医療措置協定についても影響がないとは言えない。そして、何より、保険証廃止の理由を医療DXの推進とするには無理があるのである。(葵)