TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

新春随想

郡市区等医師会長

府医ニュース

2024年1月17日 第3060号

 本紙恒例の郡市区等医師会長による「新春随想」。医療界に限らず、幅広いテーマでご執筆をお願いし、10人の先生から玉稿をいただきました。(順不同/敬称略)

「倫理資本主義」医療にも適応を
泉大津市医師会長 武本 優次

 新年明けましておめでとうございます。
 一時期、グローバリゼーションという言葉がもてはやされ、グローバル化への対応として国際競争が加速され、その弊害から自国優先、○○ファーストなる考え方が広まり、社会不安が増強しています。経済は経世済民の略語ですが、経済の中でも新自由主義が行き過ぎて反省期に入り、岸田文雄首相は新しい資本主義の中で、共生、共助を唱えています。
 昨年のプロ野球界は、阪神タイガースのアレのアレが実現しました。どんな社会でもゲームでも、一部の特定の者だけが勝ち続けるのは良くありません。誰にでも等しくチャンスがあり、そのチャンスを生かして、成功する余裕のある社会が必要です。
 面白い考え方として、「倫理資本主義」があります。社会性と経済的儲けを高いレベルで両立した経済のあり方だそうです。「ただ単に儲けたい、勝ち残りたいという考え方を捨てて、相手が望むようなことをしてあげなさい。それが資本主義としてうまく回ります」とのことです。懐疑的な方からは、そんなお人好しのことをして儲かるはずがない、人生は厳しいとの批判もあるようです。一歩立ち止まって考えてみると、一度儲けても、取引先が酷い目にあったと考えれば、二度と取引はできません。近江商人の売り手良し、買い手良し、世間良し、の三方良しの考え方かもしれません。
 医療を行っていて感じるのは、いつも経済的なことばかり考えさせられ、医療が楽しい、やっていて良かったと思うことが少なくなったということです。なぜ、こんなことになってしまったのでしょうか。国の政策が医療費削減の観点、古い経済観だけに捉われているから閉塞感を抱かざるを得ないのでしょうか? 倫理資本主義的な考え方を医療にも適応してもらいたいと願っております。

祇園精舎の鐘の声
守口市医師会長 博多 尚文

 「祇園精舎はどこにあるか」と、古典の最初の授業で問われた。ためらいもなく「京阪四条駅の近く」と答えた。北河内の山河で育った悪童に、京都の高校だからと急に教養を求められても困るのだ。JKからは少し冷ややかな視線を受けた。当時の私には、「仁和寺の或る法師」は渋滞で有名な交差点の「にわじ」で、「烏丸の姫」は「とりまる」以外読みようがなかった。祇園とつけば四条だったし、近年では京阪電鉄まで「祇園四条」と駅名を変えた。
 舞妓さんご参加の宴会は、研修医の頃の接待と10年程前の医師会の納涼理事会だったろうか。たまに食事に京都に訪れると、常に観光客があふれ、特に祇園は華やかで妖艶な街だ。また、その界隈にはパワースポットも多い。八坂神社と建仁寺は別格で、よく行くお店の近くには、「瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思う」の歌で有名な崇徳天皇の御廟(の一つ)がある。建仁寺の南には六道珍皇寺(ろくどうちんのうじ)がある。ここには冥界につながる井戸があり、閻魔さんの知り人が往来するという。だから祇園で悪事の相談は、すぐ閻魔さんの耳に入るのでやめたほうが良い。
 さらに南は六波羅になり、鎌倉幕府が六波羅探題をおいた。有名な六波羅蜜寺(ろくはらみつじ)もある。仏像(空也上人)の口から小さな仏様が出ている写真を、誰しも一度は美術や歴史の教科書で見られたと思う。
 最近、花見小路から入ったところに、見上げるばかりの木造(風)建物が完成した。祇園甲部歌舞練場で、若い人が精進修行(踊りの)をする学び舎だから、祇園精舎と言えなくもない。いっそ「これが有名な祇園精舎です」と言えば多くの観光客が信じるだろう。歌舞音曲が聞こえても「祇園芸者の鉦と声」と誤魔化せばよい。が、閻魔さんや地元の人から顰蹙(ひんしゅく)を買うだろうし、何よりも諸行無常とは程遠い話になってしまう。

映画「ドント・ルック・アップ」に見る災禍時のリアル
旭区医師会長 焦 昇

 2021年12月、Netflix original movieで記録的な配信時間レコードを作った米国映画「ドント・ルック・アップ」。巨大彗星が地球に衝突するいわゆるディザスター映画ですが、ディープインパクトやアルマゲドンなどの同様な隕石衝突の映画とは一線を画し、英雄登場ものでもお涙頂戴の物語でもありません。どうにもできない災禍に見舞われた時に人間が見せる行動の愚かさを、ブラックユーモア的にただひたすらコメディータッチに描いています。しかも、アカデミー賞受賞俳優達が出演し、美しい精緻なSFXで映像化されて。
 この映画は製作決定時期が2020年以前でコロナと時期がずれるものの、結果的にコロナ禍で見せた人間世界の右往左往を風刺してしまうことになりました。彗星(新型コロナ)は存在しない、対策(ワクチン・マスク)はしないという自分の再選しか眼中にない大統領(M・ストリープ)、資源として金儲けに利用できないか考える経済人(株価操作)、真剣に人々に彗星襲来を訴える科学者(L・ディカプリオ)がテレビワイドショーで見世物にされる、絵文字やコラージュを使ってSNSで面白おかしく囃し立てる民衆。彗星はデマだと訴えるドントルクアップ派と真実だと訴えるルックアップ派に社会が分断される。
 最後がどうなるかは映画を見ていただくとして、このように人間が大きな禍に見舞われた時、英雄が現れたり、人間愛に包まれたり、悲壮感が漂ったりするのではなくて、目先の日常のことに面白おかしくとらわれるものかもしれません。COVID―19がようやく落ちついてきた今、3年前の当初の喧騒やドタバタを思い出すのも次の災害に対する心づもりに役立つかどうか、はたまた同じ事を繰り返すのか、初夢のみぞ知るです。

府医会員意見調査にご協力を
東成区医師会長 岩本 伸一

 新年明けましておめでとうございます。本年は今後数年の医療の方向性を決定付ける重要な一年となるように思っております。
 さて、区医師会長を拝命して4年になります。ちょうど新型コロナウイルス感染症の蔓延と時を同じくして就任いたしましたので、コロナ対策に忙殺され、あっという間に過ぎた気がしています。感染症対策は地域特性がありますので、地域ごとの感染症対策の反省をしなければならない時期かと考えますが、果たしてできているでしょうか。行政と協力することは大切ですが、専門職種としての提言を各医師会単位で行うことが、次なる新興感染症対策につながるのではないかと考えております。
 また、私は大阪府医師会調査委員会委員長も拝命しているのですが、医師会の大きな役割の一つとして、現場の意見を集約し施策に反映すべく提言を行うことが挙げられるかと思います。ところが昨今は、医療DXの名の下に各医療機関に行政から直接メールが送られ、その結果を基に施策構築がなされようとしています。こうした過程は、これまでとは明らかに様相を異にしており、一体いつどこで意見を集約するのだろうかともどかしく思うことも多々あります。調査委員会は故植松治夫・元府医会長の「問題は現場にあり」の一言の下、組織されたと聞いています。会員意見調査や府民調査を行い、様々な意見を集約、考察し施策提言することを目的としております。設問するにも内容を熟知していなければなりませんし、毎回調査後にはああすればよかった、こうすればよかったと思うことばかりで、事務局や委員の先生方の多大なるご協力を得てなんとかこなしておりますが、考察、答申作成にはかなりの労力を要します。
 今般、会員の先生方にはメールアドレスの府医への提供をお願いしたかと思いますが、少しでも多くの先生方の意見集約の場として、ぜひとも調査委員会の会員意見調査に回答願いたいと考えております。ご協力の程、よろしくお願い申し上げます。

初夢「大阪市役所医師会MVP報告」
大阪市役所医師会長 細井 雅之

 昨年は、この欄に小生の初夢である「大阪市役所医師会MVP」の紹介をさせていただきました。これは、Most Valuable PlayerのMVPではなく、Medical Valuable Personとし、臨床、研究、実地活動、後継者の指導に寄与した医師会員を顕彰する「いいね制度」として、会員の労をねぎらうとともに、働き甲斐のある職場づくりを目指したいと思って制定しました。
 現在、大阪市役所医師会は、総合医療センター、十三市民病院、住之江診療所、大阪市人事室、こども青少年局、健康局保健所、教育委員会、こころの健康センター、心身障害者リハビリセンター、弘済院附属病院などに全588人の会員がいます。部門としては、研修医部門、専攻医/レジデント/シニアレジデント部門、病院部門スタッフ、行政部門スタッフ(チーム)として、全会員からの推薦を集め、選考委員会で投票をして以下のように決定しました。MVPには表彰状を贈らせていただきました。特に、COVID―19関係で活躍いただいた感染症チームには多くの「いいね」をいただきました。本年にはMVP2023を決定し、表彰していく予定です。いい初夢が見れますように祈っております。

第1回 MVP2022
専攻医/レジデント/シニアレジデント部門
山田 直紀 先生(総合医療センター小児脳神経内科シニアレジデント)
遠谷 寛人 先生(総合医療センター眼科専攻医)

病院部門スタッフ
林  和憲 先生(十三市民病院整形外科医長)
白野 倫徳 先生(総合医療センター感染症内科部長)
清水 貞利 先生(総合医療センター副院長兼医療安全管理部長)

行政部門スタッフ
國吉 裕子 先生(保健所北部保健医療監兼北区役所医務主幹、市立弘済院附属病院整形外科担当部長)
津田 侑子 先生(保健所医務副主幹、東成区役所医務副主幹)

スタッフチーム部門
大阪市保健所コロナ対策(保健所)

医師と医療AIとの程良い距離感を保ちながら
河内長野市医師会長 山口 竜司

 謹んで新春のお慶びを申し上げます。
 昨年は、医療分野におけるAIの挑戦と変革の年でした。ChatGPTが先鞭をつけて、MicrosoftやGoogleが後に続き、身近にAIが扱えるようになりました。AI技術の進化とともに、新しい医療の未来へつながる大きな一歩を踏み出した年と言えると思います。
 AIは「Artificial Intelligence(人工知能)」の略称で、1950年頃から長い年月をかけて研究・開発されてきた技術です。現在、機械学習やディープラーニング(深層学習)の発達と、多くの情報を収集し活用のためにビッグデータの解析が進められて、AIは飛躍的に進歩しました。そして、昨年あたりからはIT産業や教育などにとどまらず医療分野への導入が始まってきています。AIによる画像診断システムやAIを使ったオンライン診断システムなど様々な実証実験も進められてきており、実際の医療現場にかなり近づいてきたように感じています。
 医療の現場でAIを活用することで得られるメリットとしては、業務の効率化や診断精度の向上、医師の負担軽減、医療過誤の防止などが挙げられます。レセプト業務をAIが自動的に処理してくれれば、事務作業の効率化は図れます。令和6年度からは医師の時間外・休日労働時間の上限規制も適用されます。現場の業務の効率化をし、人的な負担を減らすことによりヒューマンエラーによる医療ミスが増えるのではというような心配も出てきており、そのあたりにもAIの導入が期待されています。このような形で、確かに医療の現場にとっては良いことのように思いますが、AIが正しい診断を行うためには、大量の症例データが必要ですから、個人情報の取り扱いに対する注意が必要になってきますし、AIにお任せというような形になってしまうと、責任の所在が不明瞭にもなってきます。令和6年は、医療AI技術はさらなる進展が期待されていると思いますが、それと同時に論理的な課題や法的な課題が置き去りにされることなく安全で信頼性の高い医療AIの実現、そしてAIによる医療革新が一部の人々に限られず、すべての人に恩恵をもたらすよう、均等なアクセスと利用の推進にも期待したいと思います。
 河内長野市においては、医師会と行政が協力をして、昨年から在宅医療の現場に遠隔医療を導入するための未来技術社会実装事業が始まっております。本年も、引き続き行政と協力をして、地域住民にとってのより良い医療の提供に結び付く形になるように努力してまいりたいと思っております。
 最後になりましたが、新しい年が、皆様にとって健康で充実したものになりますようお祈り申し上げます。

スマート社会と医師会
岸和田市医師会長 久禮 三子雄(久禮の "禮" はしめすへん "ネ" に豊)

 新年の所感と言われると、以前なら明るい未来、希望あふれる展望としたものだが、パンデミック、DX、少子高齢化と並べるとハタと困ってしまう。
 コロナを巡る一連の行政と医療機関の連携の中で厚生労働省からはG―MIS、HER―SYS、V―SYSあるいは大阪府の行政オンラインシステムなど、オンラインでの連絡システムで手を取られることが多くなった。パンデミックの際の行政需要の急速な拡大に対応するためであったが、パンデミック第四波の医療崩壊を受けて、今後の病床の「最適化」などには有力なツールになるのであろう。こういったオンラインシステムを使っての行政需要のデータ収集と資源配分の最適化が急速に進展している。
 また個々の医療機関と行政との連絡方法では、最近は「感染症法に基づく医療措置協定」の事前の意向調査など医師会を通さぬ調査があったが、こういった形では医師会取りまとめなどを通して行政の表立たない意向を会員に説明したり、医師会世論を形成したりすることが阻害される虞があり、行政による医療機関への政策誘導が医師会を介さず行われることを危惧する。我々無床診療所でも電子カルテの導入が進み、オンライン資格確認、オンライン請求とあわせて電子化が進み、将来の保険診療は電子的に管理監督されるのであろう。
 医師会に限らず民主主義社会には、農業協同組合、労働組合など職能別の団体から果ては町内会に至るまで、国家と個人の間に介在し集団の利害を調整する集団を社会学では中間団体と言うが、オンラインを介しての直接的な結びつきが中間団体の機能を将来的に減殺しないか危惧する。このまま社会のスマート化が進捗し中間団体を介さぬことが常態化すると、医療界が世論を形成し政権と対峙する枠組みが消滅しかねない。
 内閣府が科学技術基本計画を策定しソサエティ5.0なる未来社会を描いてみせる。サイバー空間とフィジカル空間を融合させたシステムで経済発展と社会的課題を解決し、人々の生活を「最適化」させるということで、国土交通省はスマートシティの未来像で反応するが、厚労省の提示する未来像は知らない。
 今、地域包括ケアの推進ということで医療と介護の間で情報の共有システム構築が言われるが、逼迫する財政、限りある医療資源、医療・介護人材の先細りの三重苦の中で効率的な最適解が求められている。超高齢社会になり「治す医療」から「治し、支える医療」へと変化したが、社会の進歩がすべて経済合理性で説明できるわけではないし、ましてやヒトの終末を支える医療にどのように「最適化」されたシステムが用意されるのであろうか。便利な社会、最適化された社会と引き換えに何かが失われる漠たる不安は杞憂だろうか。

次の世代に難儀を残さない
大阪狭山市医師会長 芝元 啓治

 明けましておめでとうございます。初詣を済ませ、おせちに杯が進む先生もおられることと、また、年末には玄関に注連縄(しめなわ)を張り迎春の準備をされたことと思われます。
 私も毎年注連縄を張り続けてきましたが、この年末は実家の注連縄張は不要となりました。南河内の実家は江戸期に建てられた大和造りで茅葺屋根をトタンで囲い長年の風雨に耐えてきました。しかし、いよいよ梁はたわみ、柱は傾き、建具との隙間が広がり危険性や近隣への迷惑を考え解体を決定しました。解体を前に家財道具等を整理・保存・廃棄するべく、昨年の後半の休日はこの作業に終始しました。
 使わない陶器や古着、使えない農機具が多量残されていました。先代や先々代等からの宿題(やり残し)を自分の代で始末をできるか、またはできないままで今世を去るかの二者択一。子孫の負担を少なくするためには、正の遺産を増やすことよりも負の遺産を減らす、そして新たに作らないことが必要です。同様に各家系にも課題が残されているものと思われます。
 残された課題は国レベルでもあり、「幕末の日米不平等条約の締結とその改正に明治政府が苦労した」と教科書で習いました。戦前には医師は国家の直接的管理を受けていたようです。戦後、医師は国家による直接支配から自由になり、医師各人の知識と経験への敬意を払う法的整備がされ、その運用が今日まで続けられてきました。
 現在の我々医師にとっては自然権的に与えられた権限と思ってきましたが、近年立体パズルのピースが密かに抜き取られ、我々の権限と主体性を挫く仕込みが続きました。リフィル処方箋、マイナカード読み取り機設置義務化、レセプト請求完全オンライン化等、なし崩し的に療養担当規則が変えられました。診療報酬改定のたびにバーター取引の中に紛れ込まされ、気付くと我々の権限と主体性は先細りしています。
 次の世代のために難儀を残さない慧眼を持つリーダーを選び支持していきたいと、この迎春に強く思います。

N選手の取り組みに感銘
大正区医師会長 樫原 秀一

 いろいろなテーマで執筆させていただいた「新春随想」は最終回となります。たくさんの先生方から「読んだよ」と声をかけていただき嬉しかったです。
 今回はゴルフです。兵庫県・小野ゴルフ倶楽部のメンバーに加えていただき36年になります。コース設計は上田治氏で鴨池を中心にホールが配置されたダイナミックなアウトコース、松林の林間を経て雄大な打ち下ろしのロングホールを有し最終ホールは水辺で締めくくるインコース。クラブハウスは質素な外観の落ち着いた佇まいです。開場62年、開催された試合は数多く、日本オープン(昭和44年:杉本英世)、日本アマ(55年:倉本昌弘、平成10年:星野英正、27年:【廣野GCとの共同開催】金谷拓実)と皆様にもお馴染みの名前が見られます。
 コースはもちろん、管理の行き届いたグリーンは硬さ、速さ、アンジュレーションともに関西屈指です。令和5年10月26・27日には日本女子シニアゴルフ選手権競技が開催され、小野GC所属のN選手の応援にまいりました。大きな期待と声援を受け初日の3打差5位から逆転を狙った第2ラウンドは、快晴の中のスタートでした。グリーンは硬くて速く、難しいホールロケーションにハーフラウンドを終えた選手達の表情は厳しかったです。
 そんなハードなコース設定の中、N選手は前半を1アンダー・パー35と会心のラウンドでした。ハーフターンの時点で暫定トップに立ち、周囲の期待を背に後半に臨みました。ところが11番をプレー中に雷雨で中断。その後、天候の回復が見込めず中止が決定され、第1ラウンドの結果が最終成績となりました。流れがN選手に向いている中、目前に見えていたJAPANのタイトル。本人はもちろん本大会に懸ける思いを知っていた友人やコース関係者も言葉になりませんでした。また、結果だけでなく最後までラウンドできなかったことが残念でならなかったに違いありません。自分が勝ちたかっただけでなく、クラブの方々をはじめとする多くの人への感謝として、その応援に応えたかったというコメントが印象的でした。ゴルフというスポーツに様々なドラマがあることを改めて知り、N選手のアマチュアとしてゴルフに取り組む姿勢に感銘を受けました。

忙中閑あり
生野区医師会長 谷本 吉造

 新年明けましておめでとうございます。「忙中閑」とは「忙しい中にもわずかな暇がある」という意味で、「六中観」という陽明学者、安岡正篤氏の座右の銘であります。どんなに忙しくしている中でも暇な時間は見出せるということでしょうか。
 私の多忙はざっと羅列してみると、郡市区等医師会長協議会、大阪市医師会連合会、大阪府医師会代議員会、大阪府医師協同組合・医師信用組合総代会、大阪市学校保健会理事会、大阪府大阪市東部保健医療協議会、IPPNWの会合、生野区医師会理事会、各学校健診、学校安全衛生委員会、介護保険審査会、障害支援区分認定審査会、生野区社会福祉協議会理事会、生野納税協会理事会、生野区老人福祉センター施設運営委員会、いくみんすこやか推進会議(健康展)、生野区要保護児童対策協議会(要対協)、食生活改善推進員協議会、いわき学園理事会、地域医療支援病院運営委員会、生野区学校保健協議会、医師政治連盟、新規指定後6カ月の医療機関に対する近畿厚生局個別指導の立ち会い、生野区医師会学術講演会、大阪府内科医会評議員委員会、糖尿病臨床検討会運営委員会、今里休日急病診療所出務、生野まつりの救護班、府医保健医療センター運営委員会等々、多忙を極める中、唯一毎日続けていることがあります。それは診療後の入浴を含めた約2時間のフィットネスジムでの筋トレ、ストレッチなどの運動であります。それにその日の出来事を含めた日記をつけること等、まさに寸暇を惜しんでの忙中閑ありであります。
 加齢に伴う筋肉の萎縮、サルコペニア(廃用性筋萎縮症)、心身ともに弱ってしまうフレイルの予防には筋力をつけることだと信じています。ロコモティブシンドローム(運動器症候群)はメタボリックシンドロームに続く新たな国民病とも危惧されています。運動能力が低下すると要介護リスクも高まるでしょう。
 私はまた、日進月歩の医学に立ち遅れることのないよう、また大過のない診療を続けるためにも各種講演会には努めて参加するようにしています。たゆまぬ研究心と真理に対する愛を持って、一生勉強を続けなければならないと思っています。患者は医師に全幅の信頼を寄せ、医師もまた患者をかけがえのない一人の人間として扱うところに真の医療が成立するのではないでしょうか。