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医師・医療関係者のみなさまへ

時事

在阪5大学・2行政医師会役員との懇談会

府医ニュース

2024年1月17日 第3060号

勤怠管理はイノベーション創出への第一歩

 令和5年11月30日に開催された在阪5大学・2行政医師会役員と勤務医部会役員および大阪府医師会執行部の懇談会では、医師の働き方改革について現状報告がなされた。働き方改革は主に急性期病院などにおける医師の労働環境の改善や医療従事者の確保・養成に関与するもので、時間外労働の上限規制や勤務間インターバルの導入により、医師の健康や生活の質を向上させることで、生産性やイノベーションを促進することが目的である。院内業務の効率化は、地域医療の変革とともに行わなければならず、周囲との調整の中で内部改革が進められる。6年度から時間外・休日労働の上限規制が適応されるに当たって、各医療機関ともかなり具体化してきた。
 5年10月から報告開始となった病床・外来機能報告の結果が6年度に公表され、さらに地域の医療ニーズの将来推測などを基本として、地域医療調整会議で議論と調整が行われる。ここで現在急性期病院が構想している働き方改革のプランが、外来形態の変更とともに変わる可能性がある。外来機能報告は、地域の医療機関の外来機能の明確化と連携に向けて、データに基づく議論を進めることが目的である。各医療機関が外来機能を報告し、紹介率や逆紹介率などの指標を用いて、地域の外来機能の現状と課題を検討していく叩き台なのである。したがって、地域の医療機関が情報を共有することで、外来機能の分化と連携を図るのであるが、大幅に改変がある時はフィードバックされ、働き方改革の内容変更を余儀なくされる。つまり今回各医療機関が発表した働き方改革の再検討が待っているのである。
 しかしこれだけではない。7年度から施行される予定の「かかりつけ医機能報告制度」の具体的な議論が進められているが、この内容が早晩地域医療構想調整会議に入ってくる。かかりつけ医機能を有する医療機関が、地域住民の健康状態や医療履歴を把握し、必要に応じて他の医療機関への紹介や逆紹介を行う。地域住民が適切な医療機関を受診できるように、医療の質や効率を向上していくことに主眼を置く。「かかりつけ医機能報告制度」に向けて具体的な議論が進められているが、かかりつけ医機能を有する医療機関は都道府県知事に報告しなければならない。また、医療機能情報提供制度においては、かかりつけ医機能を果たす医療機関を示すことが検討されている。すなわち、かかりつけ医機能には、専門医や専門医療機関との連携や紹介が必要な場合に対応できる能力が含まれているため、地域における専門医制度の改革も視野にある。
 以上のように、働き方改革は現在構想しているものが、地域医療構想調整会議で揉みに揉まれて、新しい日本にふさわしい形態に改変していくことが予想されるのである。
 さて、ここまでは医療関係者が考えていることである。しかし医療は患者が主役であることを忘れてはいけない。患者にとっては、調整会議の議論は、あくまで机上の空論に過ぎないわけであるから、実際に行動するためには、十分な説明がないと主治医の指示には応じない。過去どれだけ空論に終わったかは十分検証済みである。付け焼き刃の議論ではない、真に日本を変えるものでなければ、患者の理解は得られない。
 地域医療構想調整会議はある意味ほぼすべての国民が、患者という観客として参加する劇場のようなものである。医療機関の改革が、日本を牽引するイノベーション発祥の場となれるように、もう少しアクセルを踏み込んでいくことが期待される。
(晴)