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健康スポーツ医学再研修会

府医ニュース

2024年1月17日 第3060号

企業におけるスポーツ医の役割など解説

 大阪府医師会は10月13日午後、令和5年度健康スポーツ医学再研修会を開催。府医会館とウェブのハイブリッド形式で実施し、府医所属の日医認定健康スポーツ医ら約210人が受講した。

 冒頭、前川たかし理事があいさつ。健康スポーツ医は日常診療における運動処方・運動指導のみならず、各種スポーツ大会の出務など果たす役割は大きいと述べた。
 講演は岡田邦夫氏(健康経営研究会理事長)が「企業における健康スポーツ医の役割」と題して登壇した。労災において60歳以上の占める割合が増加していると説明。加齢による筋力の低下が一因として、高齢者が元気に働けるようにするためにスポーツ医学の介入が必要になってきたと指摘した。岡田氏が関わった研究では、喫煙対策・十分な睡眠・運動習慣が企業の利益を上げるために重要な因子となることが明らかになったと解説。従業員の高齢化が進む中で、スポーツ医学的な見地から、高齢者の体力づくりや健康づくりを積極的に進めていくことは、企業が成長する上で大きな力になると加えた。
 続いて、田中啓之氏(大阪大学大学院医学系研究科運動器スポーツ医科学共同研究講座)が「肘・手関節スポーツ障害の最新トピックス」をテーマに講演した。まず、肘関節スポーツ障害は投球動作の時に起きることが圧倒的に多いと紹介。いわゆる野球肘は主に外側型と内側型があり、小学校高学年から中学生の受診が多いと語り、肘OCD(離断性骨軟骨炎)に対する治療法などを詳説した。そのほか、手関節スポーツ障害の主な疾患として、▽TFCC(三角線維軟骨複合体)損傷▽尺骨突き上げ症候群▽尺側手根伸筋腱炎――を挙げ、病態や治療を説述した。
 次いで、細井雅之氏(大阪市立総合医療センター糖尿病内分泌センター長/糖尿病内科部長)が「健康スポーツSDGs:そのチエとワザ」と題して講演。まず、健康スポーツSDGs(継続できる運動療法)のチエとして、糖尿病診療ガイドライン2019における2型糖尿病患者の運動療法の効果を提示。血糖コントロールをはじめ肥満や高血圧等の心血管疾患リスクファクター、うつ状態などが改善すると解説した。さらに、アメリカスポーツ医学会の「Exercise is Medicine(EIM)」を紹介し、運動の有用性を患者に伝えてほしいと語った。
 ワザとしては、「ナッジ」(強制することなく誘導するような政策介入)を説示。「高価なスポーツウェアを目につくところにかける」「スポーツジムの年間予約」などを例に挙げた。