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気は優しくて力持ち

府医ニュース

2023年7月5日 第3041号

 故・司馬遼太郎氏はかつて「気は優しくて力持ち」こそ、鎌倉武士が理想とした「あり方」と表されたが、これは現代社会においても理想に足るものだと思う。若者(30~40代)向け雑誌「週刊SPA!」で最近、印象に残った記事があった。「親がネトウヨ化した家族の悲劇」では、近年、ネトウヨや陰謀論者になる人が増えており、とりわけ高齢者にその傾向が顕著である、高齢化により男性はネトウヨ化、女性は陰謀論者になる傾向があり、その背景や対策をまとめたものであった。
 ユーチューブ等の動画サイトの隆盛の下では多くのヘイト動画も閲覧でき、ネット上の真贋を問わない情報の氾濫(インフォデミック)を背景に、読者の親世代、つまり60代以上のシニア世代の、老いによる様々な不安要素の増大等といった心の状態が、容易にネトウヨや陰謀論に絡め取られてしまうとした。そういった傾向は「コロナ禍」により、さらに強化された。感染拡大や医療逼迫を防ぐため、人と人との接触を減らし、感染者や濃厚接触者の急増を抑える対策として、外出自粛などの行動制限が強く求められたが、結果的にシニア世代をさらに孤立させ、周囲が気が付いた時には、筋金入りのネトウヨや陰謀論者になってしまっているという事態を招いた。目の前の情報を信じ切ってしまうと、いかに非科学的・荒唐無稽なものであっても修正は難しい。結果的に親子が絶縁することもあるという。
 ちなみに外来で「反ワクチン主義者」に困惑した経験のある医師は少なくないのではないか? 苦肉の策として、シニアの先鋭化する物言いを軽く諌める時に用いているのが、表題の言葉である。そしてもちろん、自らにも言い聞かせているところである。(猫)