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時の話題

新型コロナウイルス感染症の後遺症

府医ニュース

2023年3月1日 第3029号

早急な原因究明と治療法の確立を

 令和5年1月8日時点、日本国内で新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)の感染者が3千万人を超えたが、そのうちの一定割合が後遺症で苦しんでいる。1年以上も続き、離職を余儀なくされた人も多い。
 海外では、long―COVIDと呼ばれWHOの定義では、「新型コロナの発症から通常3カ月以内に出て、少なくとも2カ月以上続き、他の病気の症状としては説明がつかない症状」で主な症状は「倦怠感、息切れ、記憶障害、集中力の低下、嗅覚・味覚障害など」となっている。
 3年2月から4年12月までに岡山大学病院を受診した後遺症患者526人について、デルタ株(以下δ株)とオミクロン株(以下ο株)との場合で比較した。睡眠障害はο株27%に対し、δ株13%。倦怠感はο株68%・δ株49%。集中力や記憶力低下はο株31%・δ株23%。東京都のデータでも倦怠感や睡眠障害は同様な結果で、さらに咳はο株では22%(δ株14%)と長く続き、息切れや嗅覚・味覚障害は逆にδ株より減少した。ο株はδ株に比較して重症化率や死亡率は低下したが、その感染力は増加し、患者数が桁違いに増加したため、かえって後遺症に苦しむ患者数が増えている。
 昨年12月14日、忽那賢志・大阪大学教授と豊中市は、コロナ感染者4千人についての後遺症のデータを発表した。対象となったコロナ患者の内訳はο株が77.3%、δ株9.7%、α株7.4%、武漢株5.6%であった。10日間の療養期間が過ぎても、47.7%が発熱、咳、咽頭痛などの症状がいずれか一つは残っていた。1カ月時点では、倦怠感、日常生活に支障、脱毛、咳、微熱、味覚・嗅覚障害、もの忘れ、集中力低下、動悸、不安感、睡眠障害などの後遺症のうち、どれか一つでも残っているのは5.2%、2カ月で3.7%、100日で2.5%であった。有意差はないが女性に後遺症が残りやすく、ワクチン接種回数が多いほど後遺症は少なかった。重症者は軽症者の5倍ほど後遺症が多かった。
 忽那氏によれば、コロナ後遺症のメカニズムとして、①肺、心臓への恒久的障害②集中治療後症候群③ウイルス後疲労症候群④持続する新型コロナの症状――の四つの仮説があり、それらが組み合わさっていると考えられている。
 日本医科大学の中根俊成准教授は、コロナ後遺症の症状は自己免疫性自律神経調節障害(AAG)と似ていると指摘している。免疫異常によって自律神経が攻撃される自己免疫の病気で、血液検査で病原性の自己抗体が検出される場合がある。また、体位性頻脈症候群(POTS)も自律神経調節障害が原因であるが、コロナ後遺症の症状と似ている。これらはコロナ後遺症の病態を考える上で参考となり、病態解明と治療法の確立が求められる。