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医師・医療関係者のみなさまへ

地域医療確保・新型コロナウイルス感染症対策専門家会議

府医ニュース

2023年3月1日 第3029号

5類移行後の医療提供体制を協議

 新型コロナウイルスは、変異しながら大きな波を繰り返してきた。感染者数の増加は、地域医療提供体制にも大きな影響を与える。大阪府医師会は、医療機関連携をはじめ地域医療の円滑な推進を目指し、「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」を設置する。2月19日には特定機能病院や基幹病院、病院団体の代表者らが集まり(ウェブ併用)、5月8日以降に感染症法上の位置付けが5類へと移行するコロナに係る医療体制を協議した。その後、実務者中心の「新型コロナウイルス感染症対策検証専門委員会」を開いた。

 宮川松剛理事が司会進行を務め、はじめに高井康之会長よりあいさつがあった。
 議事に移り、5月8日以降の①感染者を含めた入院体制②発熱等患者の救急受け入れ体制③一般外来の対応④発熱者の急患を含めた地域のかかりつけ医との連携⑤各項目の実施にあたり必要な行政等への支援・要望――について出席者が見解を示した。

入院体制

 専用病床の見直しを行い、通常の体制への移行をめざす病院があるなど、5類への移行に伴う各病院の入院体制はその機能により対応方針が異なるが、概ね専用病床の確保は一定維持せざるを得ないとする意見が大勢を占めた。
 とりわけ、妊婦、小児などを含めたハイリスク患者用の病床確保の必要性が強調された。その上で、各病院とも激変緩和策として病床確保のための補助や診療報酬上の支援継続ならびに行政による入院調整機能の維持・継続を強く求めた。

発熱患者の受け入れ

 大学病院の外来では、紹介患者の診察が中心であり、熱発のみの初診患者は想定していない。大阪では200床未満の私的病院が大多数であり、診療所のかかりつけ医機能を含めた対応がカギを握るとの見方が共有された。
 病院においては、重症化リスクの高い紹介患者、救急患者の受け入れはできるだけ続けていきたいとの方針が伝えられた。

一般外来の対応

 現状の検温、マスク着用、手指消毒などの標準予防策でインフルエンザと同様の診療体制を取ることが示された。発熱症状が確認された場合には、導線を分けるなど、院内で感染を広げない対策も必要とされた。近大病院の東田氏からは、感染力を考慮すると「インフルと同様の対応でいいのか不安だ」との声が上がった。
 院内感染対策では、職員がN95マスク・アイシールドを着用していても感染するとの事例が報告された。コスト負担も大きく、行政の支援が求められる。

かかりつけ医との連携

 5類に移行してもウイルスの脅威は変わらない。政府の方針は、すべての医療機関で対応するとの意図が見えるが、医療機関の感染対策は引き続き必要だ。阪大の忽那氏は、「感染防止対策加算1」を算定する医療機関を中心に、地域で診療体制を構築しておくことが大切だと語る。軽症は地域の診療所で対応し、がんや透析患者、妊婦などの紹介は大学・基幹病院が受け入れる機能分担の重要性が確認された。そして、その体制を整える手立てとしては、コロナ診療の実績に応じた診療報酬の引き上げなどが挙がった。

支援・要望

 行政、医師会に対する意見・要望を聞いた。▽行政機能のソフトランディング(松岡氏)▽空床補償よりも診療実績に応じた手当(生野氏)▽加算1算定病院が実施する感染対策研修会等への参加を医師会から呼びかけてほしい(掛屋氏)▽入院受け入れ病院への防疫手当の継続(岡崎氏)▽無料検査センターの設置(西口氏)▽医療機関受診時のマスク着用や発熱症状の申告など、患者の行動基準を行政が示す(木野氏)――などが出された。

必要な支援、行政に要望
高井会長あいさつ

 新型コロナイウルス感染症に対する協力・尽力に感謝する。5月8日から5類へ変更となり、公的支援も縮小する見通しだが、ウイルスそのものは変わらない。エンデミックが予測され、必要な支援を行政に要望していきたい。本日は忌憚のない意見交換を望む。

診療所7割強が発熱患者に対応
専門家会議・検証専門委で宮川理事が見解示す

 宮川理事は、「診療所の発熱対応機関が少ない」との声に対し府医の考えを説明した。対応できる診療所として眼科・耳鼻咽喉科・精神科などを除いた内科系、小児科に絞ると、実質4700程度になる。さらに、府医のアンケート調査やレセプトデータを踏まえると「72%の診療所が発熱患者の対応をしている」と力説した。一方で、院長が高齢やハイリスク要因、患者に免疫疾患が多いなど個別の事情もあり、これ以上対応できる診療所を増やすのは難しいのではないかとの見方も示した。
 5類移行を巡り、東京と大阪の対応の違いにも触れた。東京では、▽診療報酬の加算▽妊婦・小児・重症患者等の病床確保および入院調整▽高齢者施設等の職員に対する検査――などの継続を国に求めた一方で、大阪では「行政の手厚い支援」からの脱却が示されたと断じた。
 専門家会議に続いて行われた「検証専門委員会」でも同様の協議が行われた。近く要望書をまとめ、行政機関に提出する予定だ。