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医師・医療関係者のみなさまへ

調査委員会だより No.99

府医ニュース

2023年2月1日 第3026号

新型コロナウイルス感染症の罹患率・死亡率は医師が多いほど高い!?――この結果をどう読み解くか  文 鈴木 隆一郎(大阪府庁)

 本誌第3020号(令和4年12月7日付)で、新型コロナウイルス感染症の罹患率・死亡率を都道府県別に「第6波までの累積数」(2年1月15日~4年3月21日)でみると、人口に対する就業保健師の存在割合(保健師率と略記)が多いほど罹患率・死亡率が低かったことを示しました。同様に人口に対する医師の存在割合(医師率と略記)についても検討した結果を、順位相関係数を括弧内に添えて示すと「罹患率対医師率(マイナス0.041)」、「死亡率対医師率(0.023)」であり、「相関は全くない」と言っても過言ではありません。「致命率対医師率(0.077)」も有意な相関ではありません。恐らくここまでは関係された医師が少なかったのであろうと思います。
 ところで、「第7波のみの累積数」(4年3月22~9月21日の6カ月分)を「第6波までの累積数」(約26カ月分)と比べると、死亡者数は0.62倍でしたが、罹患者数は2.4倍もある巨大な波でした。そこで同様の検討を「第7波のみ」でしてみると、保健師率は相関がみられなくなり、「罹患率対医師率(0.527)」、「死亡率対医師率(0.340)」と順位相関係数の絶対値はやや小さめですが、有意な順相関を認めました。「致命率対医師率(0.049)」は有意な相関ではありませんでした。
 第7波においては、政府はワクチン接種以外の感染防止策をとりませんでしたので、保健師の働きが見えなくなっても不思議ではありません。しかし、「医師が多いほど罹患者も死亡者も多い」のは困ったことです。医師が疾病を作り出し、症状を悪化させるはずはありませんので、これは感染があまりにも巨大になりすぎて、検査をすればするほど罹患者が判明してくる、すなわち「検査が飽和(saturate)してしまった」状態を象徴していると考えます。第7波の真の罹患者数・死亡者数を私達はついに知り得ないのだと思いました。