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時事

電子処方箋がスタート

府医ニュース

2023年2月1日 第3026号

本領発揮はまだ先か

 1月12日、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会が開催された。議題の一つに電子処方箋が上げられ、山形県酒田、福島県須賀川、千葉県旭、広島県安佐の4地域で昨年10月31日から行われたモデル事業について報告が行われた。
 最終的に38施設(7医療機関、31薬局)が参加、データ登録は計9万241件、重複投薬・併用禁忌のチェック実施は15万5812件であった。重複投薬等の検知は、医療機関では10万4105件のうち3.7%、薬局では5万1707件中、実に8.4%にも及び、これまでの調査における処方箋1件あたりの疑義照会率3%を大きく上回る数字とされた。患者を巻き込んでの実施には、システム面で概ね問題はなかったと評価された。
 電子処方箋は、オンライン資格確認のネット回線を用い、支払基金や国保中央会のクラウド(電子処方箋管理サービス)にリアルタイムで処方箋データを登録して、情報連携する仕組みである。処方や調剤時に、直近分も含めた重複処方等のチェックが可能となることが、大きなメリットとされている。医療機関・薬局では、患者の同意があれば、過去3年分の処方内容も閲覧できる。このほか、▽患者への6ケタの引換番号付き「控え」の提供は、紙による手交に限定せず、メールやアプリを介した電子的な交付を認め、また、処方箋原本の薬局への郵送が不要となることから、特にオンライン診療での利便性が増すこと▽救急医療および災害時における情報参照システムの構築――も期待されている。なお、電子処方箋か紙の処方箋かの選択は患者の希望による。マイナンバーカードを用いない資格確認の場合は、処方・調剤情報の参照はできず、重複等の有無のみチェック可能となる。
 運用開始日が、具体的に1月26日と公表されたのは、昨年12月21日になってからであったが、全国的に準備ははかどっていない。
 医療機関の準備として、①オンライン資格確認の導入②医師〝毎〟に電子署名手段の取得:事実上、医師の場合は日本医師会が発行する「医師資格証(HPKIカード)」または「HPKIセカンド電子証明書(カードレスでスマートフォンを利用)」③レセコンや電子カルテ事業者への発注(既存システムの改修やHPKIカード読み取りのためのICカードリーダーの設定)④「医療機関等向けポータルサイト」での利用申請――が必要になるが、オンライン資格確認の原則義務化への対応に追われ、手が回らないばかりか、認知度すら低いのが現場の実情である。
 そして残念ながら、現時点では、すべてのメリットは享受できない。重複投薬等のチェックは〝対応機関の院外処方箋のみ〟を対象とするため、リフィル処方や院内処方、非対応医療機関の情報は、対象外となる。当面、お薬手帳の確認は欠かせない。さらに患者への周知は十分ではなく、処方箋の発行方法の選択や、紙の控えの取り扱いについての説明は、医療機関に大きな負担となり得る。セキュリティーや通信障害の不安も当然ある。
 国は、令和7年末までに、概ねすべての医療機関と薬局での導入を目指している。導入のための補助金は、従来、今年3月までの期限で高い補助率(診療所では事業額38.7万円を上限にその1/2)が設定されていたが、来年3月末までと1年延長された。
 ちなみに、1月25日修正公表分(15日時点)では、運用初日から利用できるのは、全国で154施設、大阪府で4薬局にとどまっている。
(学)