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府医ニュース

2022年6月15日 第3003号

 ◆「私は能力と判断の限り患者に利益すると思う養生法をとり、悪くて有害と知る方法を決してとらない」。医師の職業倫理を表すヒポクラテスの誓いにある。
 ◆時代を経て、医療が進歩し患者の死生観をも考慮するようになった現代医療は、医の倫理と法との狭間で揺れ動いてきた。不治の病に苦しむ患者の安楽死や延命治療中止の尊厳死の倫理はその歴史を辿っている。そして今、終末期の高齢者医療の倫理が求められている。
 ◆新規の透析導入患者の高齢化に伴い、認知症や重篤な心血管合併症、末期がんなど透析が困難でその有益性も得られないケースが増えている。これを受け、高齢の腎不全患者の透析の非導入および終了を決定する際の手順と、その後の緩和ケアを示す『高齢腎不全患者のための保存的腎臓療法』が作成された。
 ◆腎不全になれば必ず透析、見合わせれば尊厳死という概念から、保存的腎臓療法という緩和ケアの選択があることで医師の職業倫理を果たせる。今後の終末期高齢者医療の転換への指針ともなるであろう。(誠)