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時事

大阪府 コロナ禍 ワーストワン

府医ニュース

2022年3月2日 第2993号

統計から見る大阪の実情

 札幌医科大学医学部附属フロンティア医学研究所ゲノム医科学部門(旧・附属がん研究所分子生物学部門)がウェブ上で、「人口あたりの新型コロナウイルス感染者数・死者数の推移」をグラフで掲載している。非常に見やすく、感染状況の客観的な理解に役立つので、会員諸氏はこの統計サイトをネット上で検索してほしい。大阪府の感染状況が長期間にわたり極めて悲惨な状況であることが分かるはずだ。
 特に、同統計によると2021年5月、つまり第4波から、都道府県別の「人口あたりの死亡者数」で大阪府は全国ワーストワンを維持していることが読み取れる。今回の第6波では、死亡者数のみならず「人口あたりの重症者数」においても、他県と比較して大阪府は圧倒的に多い。新型コロナ流行当初の「医療崩壊」と呼ばれた欧米各国と同じような状況にあると認めざるを得ないであろう。
 一方、コロナ専門病棟、発熱外来、コロナ往診対応医療機関、さらにはワクチン接種など、医療機関を取り巻く環境は多忙かつ厳しい。同じく、感染症そのものの防波堤ともいうべき行政による保健所機能の崩壊は、急場の増員だけでは解決できなくなっている。特に大阪では、HER―SYSの入力遅れのみならず、1月下旬に「重症化リスクのない39歳以下の人は自宅療養を基本とし、原則保健所からの連絡はない」とされ、2月中旬からはその対象年齢が「64歳以下」と引き上げられた。そして、その通達が大阪府民に幅広く広報されているとは言い難い。このような、行政がすべての感染者をきめ細かく観察できなくなった現状は、平時に保健所機能を削減したことによって引き起こされたことが一因だと考えている。
 東日本大震災では約1万8千人の死者・行方不明者であったが、新型コロナウイルス感染症による死者数は全国で累計約2万2千人である。感染症と震災による被害者数を一概に比較することはできない。しかし、今回のコロナ禍を災害と捉え、事前の備えをどうするのかを議論するなら、今回の被害拡大の一因は、新自由主義思想に基づく「無駄を省く」ための医療計画、行政計画が挙げられるのではないか。
 第6波までは、流行が収まると、すぐに医療費削減、病床削減などの緊縮が議論の対象となっていた。これだけ多くの人々の命を失ってもなお、緊縮政策を続けるなら、為政者は人々の生活に全く寄り添っていないと言わざるを得ない。
(葵)