TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

新年のごあいさつ

大阪府医師会長 茂 松 茂 人

府医ニュース

2022年1月5日 第2987号

コロナ禍に即した医療体制を構築
安心・安全の社会保障を堅持する

 明けましておめでとうございます。令和4年の新年を迎えるにあたり、会員の先生方におかれましては、健やかに新年を迎えられたことと、お慶び申し上げます。
 さて、昨年は新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るい、我が国でも度重なる緊急事態宣言が発出されました。デルタ株による新規感染者の急激な増加は、保健所機能を低下させたばかりでなく、病床機能の逼迫を招きました。重症病床が満床となり、やむなく中等症病院が重症者の治療を担う一方で、本来、入院を必要とする患者が自宅療養を強いられるなど、およそ平時では考えられない事態を経験しました。こうした中でワクチン接種が進んだこともあり、新規感染者数は落ち着き、重症化率、死亡率も大きく改善しました。また、多くの犠牲を払いながらも、新たな治療薬の開発によって、有効な治療手段を得られた1年であったとも言えます。新型コロナの脅威が続く中、治療の最前線や診療・検査医療機関で患者に向き合われた先生方をはじめ、ワクチン接種に協力いただいた先生方の献身的なご努力に心からの敬意と感謝を申し上げます。
 今年も最大の課題は新型コロナ対策にあると言えます。日本は経済が成熟しGDPもそれほど伸びない中で、少子化で高齢者の支え手が減少する局面に変化してきており、これまで医療を効率化するという名目で医療費が抑制されてきました。こうした国の一貫した政策に加えて、もともと医療現場は余裕のないぎりぎりの状況で医療者の献身的な努力によって何とか支えられてきたものが、コロナ禍により一挙にそのしわ寄せが明らかになったと言えます。普段から感染拡大時に備えて平時と有事に分けた医療提供体制を構築しなければなりません。そのためにも感染が拡大すれば、公立・公的病院が優先してコロナ診療にあたり、地域医療は他の医療機関で診るというように医療機関同士である程度の役割分担を決めておくことが重要だと思います。もちろん経口薬の薬事承認に伴い、自宅療養者を積極的に診る「かかりつけ医」への支援も欠かせません。本会としても、行政と連携してこうした取り組みの推進に努力して参ります。
 また、今年からは団塊の世代が後期高齢者入りすることになります。社会保障費の膨張がクローズアップされるだけに、給付抑制と負担増を狙った改革圧力が強まり、より一層厳しい対応を迫られることが予想され、引き続き社会保障が後退することのないように全力を尽くして参ります。
 昨年10月に新しい資本主義を唱え、分配政策を重視する岸田文雄政権が誕生しました。経済界や有識者の多くは分配よりも成長戦略を重視すべきだとして、新しい資本主義の考え方に懐疑的な見方をしているようですが、国民の所得水準が落ち込む中で低い所得層が厚みを増していることは明らかであり、誰もが安心して暮らせる社会を目指すべきだという姿勢は、私ども医師会とも同じ方向性を目指しているものと理解しております。社会保障政策を含むこうした問題にも医師会は積極的に発言し、強いリーダーシップを発揮していかなければなりません。
 引き続き、「国民医療の充実」「会員のために汗をかく」「組織強化」を念頭に自らの使命を果たすとともに、医療現場の声を政治に届ける役割を果たすべく邁進する所存であります。会員の先生方のご支援、ご協力をお願いするとともに、会員ならびにご家族、職員の皆様方が今年1年ご健勝でご活躍されることを心より祈念申し上げます。