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時事

後発医薬品、出荷調整相次ぐ

府医ニュース

2021年9月15日 第2976号

薬剤費削減方針の結果、供給力低下へ

 ジェネリック医薬品(以下、後発品)は先発医薬品と同じ有効成分を含み価格が安いことから、国民への広報や診療報酬へのインセンティブなどを通じて、国は普及を促進してきた。平成29年6月の閣議決定において「令和2年9月までに、後発医薬品の使用割合を80%とし、できる限り早期に達成できるよう、更なる使用促進策を検討する」と定めた。2年9月時点の後発品数量シェアは約78.3%。
 しかし、昨年から本年にかけて、国が承認していない工程で製造していたなどとして、後発品メーカー2社が立ち入り調査や業務停止命令を受けた。その余波は、後発品他社メーカーの供給力を低下させた。また、業界団体が呼びかけた自主点検でも複数のメーカーで問題が見つかるなどし、供給停止や出荷調整はこのような形で我々医療現場に影響を及ぼしている。
 日本心不全学会は本年8月16日、ビソプロロール錠の供給不足を受け、左室駆出率が低下した心不全患者への対応に関する提言を公表した。他にも、エナラプリル、ニフェジピンなど循環器領域ではおなじみの薬が後発品メーカーの出荷調整の品目に挙がっている。
 更に、出荷調整がかかる後発品は循環器領域のみではない。フルコナゾール、アルファカルシドールなど多岐領域にわたる。9月に入り、アセトアミノフェンの自主回収というCOVID―19治療に影響を与えかねないニュースも入ってきた。
 国は後発品促進を勧める中で、安全安心への配慮として、先発品同様の品質の担保、そして、安定供給への配慮を怠らないようにしていたはずだ。個別のメーカーの責任はもちろん問われるべきではあるが、その背景として、「無駄を省け」「医療費を減らせ」などという緊縮政策の影響はないだろうか。薬剤費、いや医療費の削減策は、当然、人件費の削減へとつながる。 
 また、効率化を推し進めるといずれは限界に突き当たる。それでもなお「後発品使用率80%以上」「プライマリーバランスゼロ」という予算を制限する目標があると、結局は現場の労働者への見えない負担へと転嫁されてしまう。そういった手段と目的の入れ替わった結果、後発品に関する製造事故や供給不足を引き起こしたのではないか。
 薬剤費を減らして診療報酬本体を上げるという意見も医療界からあがっていることは承知しているが、今必要なのは、「よそを減らしてこっちに誘導」方式ではなく、国債を中心とした財政出動、政府支出によって、本来必要な領域に必要なだけ予算を作ることである。「予算が足りない」が前提にある議論ではなく、国民の安心安全を担保するという方針転換が大いに望まれる。(葵)