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医師・医療関係者のみなさまへ

時の話題

コロナによる緊急事態宣言下

府医ニュース

2021年5月19日 第2964号

学校・教育現場の子ども達を守る

 約1年前のことになるが、令和2年4月25日の大阪の新型コロナウイルス新規感染者数は29人、1日のPCR検査体制は約400件であった。この状況下で、大阪府下の学校は3月末からの休校が継続となり、東京オリンピックは1年延期された。
 しかし、今年4月25日に3回目の緊急事態宣言が発出された大阪では、1日のPCR検査体制は30倍近い1万件、新規感染者数は1050人を超え、自宅療養者は1万204人に上っている。重症病床数を重症患者数が上回り、医療崩壊レベルである。大阪府は苦渋の判断で、何とか一斉休校は避けたいとして、大学は再度オンライン授業になり、府立学校ではクラブ活動の禁止、家庭訪問・校外学習・修学旅行もすべて中止または延期となった。
 文科省はICTを利用した学習支援を急遽前倒しにして、3月末に1人1台のタブレット端末を市町村学校に配布した。その中、大阪市教育委員会は単独で、小中学校は原則対面授業をせず、オンライン授業を開始すると発言したが、翌日に撤回。今度は「午前にオンライン授業、その後登校して給食を取った後、対面授業をする」と発表した。
 混乱した対応に大阪府医師会は、大阪市長・大阪市教育委員長に「緊急事態宣言下における学校休業への対応について」の文書を発出した(以下、一部抜粋)。『英国型変異株の流行により子ども達の感染・発症者が従来に比べて増えていることは確かです。しかし、変異ウイルス流行下にあっても、子どもは流行の中心ではなく、また重症化しにくいことも論文で発表されています。(中略)子ども達の学びと育ちを守るため、大阪市立の小中学校が一斉に登校時間を制限するなどといった措置が取られることのないよう、適切な対応をお願いたします』。
 昨春の一斉休校後に国立成育医療研究センターが実施した調査結果において、うつ症状を表す子どもが増えていることが明らかになっており、長期の休校措置が、保護者にも多くの影響を及ぼすことが危惧されている。
 ハードがあってもソフトが不十分であればタブレット端末はただの箱である。子ども達の登下校の安全は地域の協力なしには守れない。最も守るべきは学校、すなわち子ども達の居場所であり、そこの主は子ども達なのである。
 今年の大型連休では、人の流れはやや減少したものの、1年前に比べて2倍近い人出となっているところも見受けられた。東京オリンピック開催の是非を問うべきところが、各地で聖火ランナーが走り、ニュース番組の半分が深刻な医療崩壊とワクチン接種の話題、半分は東京オリンピックの話題である。国外で治験が始まったとはいえ、16歳未満へのワクチン接種は随分と先のことになるだろう。
 私達に今できることは、①子ども達に関わる者、保護者・教員・保育士などが、できる限りワクチンを接種して自らの感染の危険を遠ざける②子ども達の居場所である学校の安全・安心を守るために連携を取り合う③コロナ禍を超える新たな学びの形を子ども達とともに考え出す――ことである。教育現場に託された課題は大きいと自覚したい。