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医師・医療関係者のみなさまへ

令和3年度第1回 医療問題研究委員会

府医ニュース

2021年5月19日 第2964号

実態に即した地域医療提供体制

 令和3年度第1回「医療問題研究委員会」が4月14日午後、オンラインで開催され、中尾正俊副会長が、医療法改正や地域医療構想などの見解を示した。なお、本講演は昨年12月の実施を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の第3波などにより、延期とされていた。

 当日は栗山隆信理事が司会を務め、はじめに茂松茂人会長があいさつ。新型コロナの第4波に触れ、▽変異型ウイルスが拡大し、今までとは異なる状況となっている▽治療期間が伸びており、ベッドの確保が更に困難▽ワクチンの接種にも課題が山積している――などを挙げ、医療界が一致団結して対応していかなければならないと力説した。また、今回の講演を通し、「将来の医療提供体制を考えてほしい」と言及。引き続き喫緊の医療問題について意見を交換したいと述べた。

医療法改正への視点

 中尾副会長はまず、医療法改正に関して①医師の働き方改革②各医療関係職種の専門性の活用③地域の実情に応じた医療提供体制の確保――の観点から解説。医師の働き方改革では、2024年4月施行という目標ありきで拙速に進めると「地域医療に混乱を来す」と注意を喚起。あわせて医療関係職種の業務範囲を見直すに際しては、相当程度の研修が必要であり、医療安全の視点からも国民が納得できる制度とするよう訴えた。同じく医療提供体制の確保では、地域医療調整会議や医療審議会での十分な協議・合意に基づくことが大事だとした。
 引き続き、高齢社会における医療介護提供体制を説明。高齢者の推移とともに疾病構造が感染症から生活習慣病へと変化していることに触れ、傷病別に見た適切な医療・介護の在り方を踏まえ、「2040年に向けた検討が重要」と説いた。更に、地域医療構想による病院の再編・統合を詳説。現行の「病床機能報告」では、診療実態を把握するには不十分であり、「定量的な基準」を含めた指標が必須だと指摘。公立・公的医療機関の再編についても同様で、今回の新型コロナで経験した感染症対策も加味した論議を求めた。

医師の働き方改革・偏在対策

 次いで、年間960時間以内の時間外労働上限規制を原則とする医師の働き方改革の方向性を整理。今までの医療提供は医師の長時間労働に支えられていたが、医師の健康確保と地域医療の両立の観点から進めなければならないと力を込めた。
 最後に「医師偏在指標」を用いた医師偏在対策と医師確保計画・外来医療計画を説示。将来の人口構成に基づき、実態に即した医師確保に取り組むべきだと強調した。また、外来医療に対しては、機能の明確化、連携、かかりつけ医機能の強化をキーワードに挙げ、地域医療構想調整会議の更なる活用が肝要との見方を示した。その上で、制度改正では今回の新型コロナを踏まえた対策を盛り込むようあらためて主張。地域の混乱を招かないためにも医療現場にきめ細かな説明を行うことが大切だと結んだ。