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時事

新型コロナワクチン、高齢者への接種が本格化

府医ニュース

2021年5月5日 第2963号

より安全に、より効率的に

 新型コロナワクチンの医療従事者等への接種がなかなか進まない中、4月12日に高齢者への接種が始まった。26日時点で、1回目の接種を行った医療従事者は198万6181人(全体で約480万人とされるうちの約41%)、2回の接種を終えたのは92万385人(同約19%)である。高齢者は、9万3944人が1回目の接種を受けている。
 先行接種が始まった2月17日以降4月18日までの集計で、医療機関からアナフィラキシーとして報告された事例は計492件である。このうち専門家の評価の結果、ブライトン分類の基準を満たしたアナフィラキシーと診断されたのは88件、100万回あたりでは46件と報告されている。絶対数として多くはないが、インフルエンザワクチンが100万回あたり1件程度とされているのに比べれば、高率である。
 また、4月23日に公表された、先行接種の被接種者1万9807例の登録による調査結果では、▽1回目接種後の発熱(37.5度以上)は3.3%だが、2回目は38.0%と高率▽発熱する場合は翌日が多く、接種3日目には解熱▽接種部位の疼痛は90%を超えて自覚され、接種翌日が最も頻度が高く、3日後には軽快▽2回目接種では接種翌日に頭痛(5割)、全身倦怠感(7割)の自覚があった▽年齢および性別によって副反応の発現頻度は異なり、若年者や女性が高かった――とまとめられている。ちなみに、65歳以上の511例に限ると、発熱9%、全身倦怠感38%、頭痛20%と相対的に低率であったが、接種部位疼痛は80%と、他の年代と大差はなかった。
 4月21日には、接種後の発熱等の症状への対応についての事務連絡が発出された。医療機関等での相談対応にあたり、必要に応じ解熱鎮痛剤等による症状の緩和を図ることや、COVID―19の症状である咳や息切れ等の呼吸器症状、味覚障害・嗅覚障害は、ワクチン接種後の症状としてはほとんど報告されていないことなど、留意事項が示されている。
 これから多くの高齢者への接種を進める上で、安全と同時に効率もポイントとなる。接種会場でのリスクを減らす観点からは、効率は安全の一部をなすとも言える。
 4月8日に厚生労働省からリーフレットおよび動画で公表された「医療従事者のための新型コロナウイルスワクチンを安全に接種するための注意とポイント」では〝集団接種の場合、予診は、問診と視診を基本とします。予診医が必要と認めた人には聴診・触診を行います〟とされており、聴診・触診を必須とはしていない。また、〝集団接種で問診医が接種に迷う場合は、個別接種を検討していただくのもよいでしょう〟としている。救急対応での搬送体制の確保に関し、医療機関との連携が進められているが、一定以上のリスクを有する人の接種場所の確保についても、地域での連携が必要となるかもしれない。
 地域にとっても国にとっても初めての経験が続く。現場としては、煩雑なシステムに振り回されず、安全で効率的な接種に集中したい。実施しながら仕組みを修正する英断が期待される。
(学)