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介護保険研修会・主治医意見書作成に関する説明会(第2回)

府医ニュース

2021年5月5日 第2963号

感染症や災害への対応力強化を推進

 大阪府・大阪市・大阪府医師会主催による令和2年度介護保険研修会・主治医意見書作成に関する説明会(第2回)が3月13日午後、府医会館で開催された。今回は、新型コロナウイルス感染防止のためオンラインとの併用で行われ、会場には府医会員、看護師、ケアマネジャーなど242人が参集した。

 中尾正俊副会長が司会・座長を務め、冒頭、茂松茂人会長があいさつ。介護保険制度が始まって20年が経過し、制度の定着・確立は進んでいると言明。今後は、団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けた地域包括ケアシステムの推進、支え手である現役世代人口が急速に減少する2040年への備えが重要とした。更に、介護保険料の負担増や人材不足など多くの課題があり、これらの問題を乗り越えられるよう行政と連携しながら取り組んでいきたいと力を込めた。
 最初に、江澤和彦・日本医師会常任理事が「第8期介護保険事業(支援)計画と介護報酬改定について」と題して講演した。まず、新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取り扱いに言及。有症状者・無症状者に関する退院基準や、その基準を満たした患者を受け入れた場合の退所前連携加算の算定などが示された。
 また、令和3年度介護報酬改定の概要として、新型コロナウイルス感染症や大規模災害が発生する中での対応力強化のほか、▽地域包括ケアシステムの推進▽自立支援・重度化防止の取り組みの推進▽介護人材の確保・介護現場の革新▽制度の安定性・持続可能性の確保――を挙げ、各項目について解説した。
 基本報酬の見直しについては、介護職員の人材確保・処遇改善にも配慮しながら、物価動向による物件費への影響など介護事業者の経営を巡る状況などを踏まえ、全体でプラス0.70%とした。これを踏まえて、すべてのサービスの基本報酬を引き上げるとともに、令和3年4月から9月末までの間の基本報酬に0.1%上乗せした対応になると加えた。
 なお、「感染症や災害への対応力強化」では、感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築する観点から、すべての介護サービス事業者を対象に、業務継続計画(BCP)の策定、研修・訓練の実施などが義務付けられたと指摘。「地域包括ケアシステムの推進」では、認知症専門ケア加算、認知症行動・心理症状緊急対応加算の新設のほか、看取りへの対応の充実、長期入院患者の介護医療院での受け入れ推進、介護療養型医療施設の円滑な移行などを詳説した。「自立支援・重度化防止の取り組みの推進」では、介護サービスの質の評価と科学的介護の取り組み推進として、令和3年4月より、VISIT、CHASEを一体的に運用するLIFE(科学的介護情報システム)が開始されることを紹介。今後、LIFEを用いた厚生労働省へのデータ提出とフィードバックの活用による、PDCAサイクル・ケアの質の向上を図る取り組み等が推進される。
 最後に、コロナ禍における地域包括ケアとして、感染対策を踏まえた住民主体の通いの場や、関係団体・専門職の関与など、要介護者が閉じこもらないための工夫が必要と強調。新型コロナウイルス感染症の「収束」から「終息」へ向けて、▽パンデミック以前とは異なる新たな社会▽デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進▽求められる「変革」と守るべき「尊厳」――を実現することが大切だと締めくくった。
 続いて、小田真氏(府医介護・高齢者福祉委員会委員)が「主治医意見書記入の留意点」について解説。「要支援2」「要介護1」の振り分け方などにも言及した。更に、円滑な要介護認定に向けて医師会で作成した「主治医意見書問診票」を紹介。問診票を活用することで、期限内の要介護認定、認定審査会での適正な認定、要介護認定業務の効率化などのメリットが期待されるとした。次いで、府内の病院医師を対象とした「主治医意見書」に関する実態調査の結果を報告。「病院医師は介護保険制度を知る機会が少ない状況にある」として、研修会等を通じての介護認定や介護サービスの一層の周知や主治医意見書問診票の更なる普及が必要とした。また、茨木市医師会が実施した「主治医意見書・問診票の活用に関する実態調査」の結果等についても紹介があった。