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医師・医療関係者のみなさまへ

生野区認知症・在宅医療シンポジウム

府医ニュース

2021年4月28日 第2962号

ひとりで考えずに相談相手をつくる

 生野区の三師会や居宅介護支援事業者連絡会など10団体で組織する生野区認知症高齢者支援ネットワーク会議および在宅支援ネットワーク会議が主催する「認知症・在宅医療シンポジウム」が3月13日午後、同区民センターで開催された。区民・関係者ら約170人が参集し、認知症支援の取り組みを学んだ。
 冒頭、主催者を代表し谷本吉造・生野区医師会長があいさつ。日頃の支援ネットワークの事業運営への理解と協力に感謝の意を示した。また、住み慣れた地域で自分らしく暮らせるように、「認知症の発症から在宅の看取りまで自身や家族に何ができるのか」を一緒に考えたいと述べた。
 次いで、坂西涼氏(おおさか法務事務所司法書士)が「在宅か施設か――お金の話」と題して、これまで300人以上の成年後見人となった経験を基に語った。まず、同氏は終活に関する調査では、「財産管理」と「家の荷物整理」が終活にしておきたいことの上位を占めると説示した。なお、生活の場所や何歳までお金が必要かなど、これからのことは「ひとりで考えずに相談相手をつくる」ことが重要で、相談することで自分の考えも整理されると明言。その上で、自分の財産や収入などの「現状把握」と、生活費や介護にかかる「必要経費の把握」が今後の目標決定には必須とした。
 また、自宅と施設の選択を助言。自宅では介護サービスを活用しながら長く暮らす工夫は可能であり、施設入所を希望する場合も、要介護度などにより利用可能な施設の種類や費用などの情報を収集して判断するよう求めた。更に認知症への備えで「財産管理」を家族に任せる(家族信託)か、専門家である成年後見制度を利用するかなど、その手続きも含めて「今後のことを自分や相談相手と少しずつ決めていくこと」が大切であると結んだ。
 引き続き、「もし家族が認知症になったら」として、ひとり暮らしの認知症高齢者の生活をどのように支えるかを題材に地域ケア会議を模擬展開。最初に、会議を開催するまでの対象者の状況整理や会議メンバーの選定など地域ケア会議の趣旨を参加者に伝えた。その後、宮本峯豪・同医師会理事も含めた医療・介護・行政など10職種のメンバーが、具体的な処遇を話し合う場面に、参加者の区民も聞き入った。
 最後に、草野孝文・同医師会理事が、認知症を日常生活の中で気付き、早期に認知症サポート医や地域包括支援センターに相談することが大事であると総括した。