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『調剤薬局の青年はフェラーリを乗り回している』?!

府医ニュース

2021年4月21日 第2961号

住之江区医師会 濵﨑 寛

 PRESIDENT Online(対談、2020年1月31日記事「なぜ日本は世界一の〝薬剤師パラダイス〟になったのか――その〝つけ〟を払っているのは消費者」)で作家の猪瀬直樹氏が自著『日本国・不安の研究〝医療・介護産業〟のタブーに斬りこむ!』の出版経緯について、「調剤薬局の青年がフェラーリを乗り回しているという話が取材の端緒だった」と述べており、興味を持った。
 中でも、「国民医療費43兆円のうち、医科診療医療費が31兆円を占めており、8兆円の薬局調剤医療費はあまり目立たないが、きちんと精査する必要がある」「厚生労働省が場当たり的に〝医薬分業〟を進めた結果、薬局調剤医療費…特に1兆9千億円の調剤技術料を我々が負担しなければならなくなった」と述べており、医薬分業に政策コストがかかりすぎている点、それを利用者である患者が支払っている点を問題視していることに大いに共感した。
 一方、この薬局調剤医療費については、日医総研ワーキングペーパー『調剤報酬の現状について』(№397、2017年12月14日)において「大手門前薬局、チェーン薬局は高い利益率を維持し、上場大手では配当をし、内部留保を積み増している」「国民、被保険者、患者の納得を超える利益を得ている薬局に対しては、大胆な適正化が必要であろう」「(院外処方の場合の)調剤関連技術料1兆7千億円は、すべて院内処方した場合の費用8千億円(推計)に見合う機能を果たしているのか」と指摘しており、これを受けて当時の横倉義武・日本医師会長も2018年3月25日の代議員会で大手薬局チェーンの調剤薬局の内部留保や配当が大きく増加していることについて「国民の保険料、税金、一部負担を株式会社が株主に還元することは大きな問題」「可能ならば保険調剤薬局は非営利法人に限定することも考えられる」と懸念を表明しておられる。
 医薬分業が国(厚労省)により強力に推し進められて約30年。このままではフェラーリに乗る調剤薬局の青年と、ビル診でつつましやかなマンション暮らしをする開業医という構図を崩せそうにない。