TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

時の話題

次期医療計画の見直し

府医ニュース

2021年2月17日 第2955号

「新興感染症等の拡大時における医療」追加

 厚生労働省は令和2年12月3日、「医療計画の見直し等に関する検討会」を開催。「新型コロナウイルス感染症対応を踏まえた今後の医療提供体制の構築に向けた考え方(案)」と「外来機能の明確化・連携、かかりつけ医機能の強化等に関する報告書(案)」を提示し、了承された。
 今般の新型コロナウイルス感染症拡大による損害は、過去に例を見ないほど甚大であり、国民の生活全般に与えている影響は非常に深刻であることから国難ともされた。そのため、世界に冠たる公的国民皆保険制度により、諸外国に比べて安心・安全と評価される日本の医療提供体制が一部地域においては既に崩壊しており、更には壊滅する恐れがあると繰り返し報道された。
 つまり、平時においては、かかりつけ医を中心に皆保険制度の下、地域の各医療機関が自院の医療機能の特性に応じた役割分担を担い、連携することで地域の医療提供体制が機能してきた。しかし、新興感染症拡大、大規模災害時などの有事の際の医療提供体制については、必ずしも十分とは言えず、今回の新型コロナウイルス感染症の拡大により、その脆弱さが露呈した。災害医療については、DMAT・JMAT・災害拠点病院などの整備、更には過去の阪神淡路大震災、東日本大震災などの甚大な災害を教訓に災害医療の在り方の議論が進み、徐々にではあるが体制整備されてきた。
 しかし、想定されている南海トラフ地震等の大災害への備えについては、いまだ道半ばであると言わざるを得ない。現在の医療計画には、「災害時の医療」は、その重要性から5疾病5事業の1事業として明示されている。災害時には、原則として都道府県全体を圏域として、災害拠点病院が災害時に担うべき役割を明確にするとともに、大規模災害を想定し都道府県をまたがる広域搬送等の広域連携体制を定めるとされている。
 検討会では、今回の新型コロナウイルス感染症拡大を受けて、「新興感染症等の拡大時における医療」を次期第8次医療計画(令和6~11年度)に6事業目に付け加えるとした。項目については、平時と感染拡大時に分け、それぞれの取り組みに必要な観点から記載することが想定されている。今後、記載項目や施策の進捗状況を確認するための数値目標等について、具体化に向けた検討が進められる予定である。
 このように、感染拡大時の短期的な医療需要には、各都道府県の「医療計画」に基づき機動的に対応することを前提に、地域医療構想については、その基本的な枠組み(病床の必要量の推計・考え方など)を維持しつつ、引き続き、着実に取り組みを進めていく必要があるとしている。新興感染症が、次期医療計画の6事業目として追加、明記されることに異論はないと考えられるが、地域医療構想は、これまでの議論では医療費削減を命題とし、効率化、病床削減ありきとしていることは否めない。今回の事態(新型コロナウイルス感染症拡大)を教訓とし、医療には常に多少の余裕が必要であることを肝に銘ずるべきである。