TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

本日休診

「生活崩壊」も防げ

府医ニュース

2021年2月3日 第2954号

 昨年10月、麻生太郎副総理は、新型コロナウイルス対策で配られた一律10万円の「特別定額給付金」の多くは貯金に回り、景気浮揚効果は限定的だったとの認識を示した。一方、国民から定額給付金に対して「貰いすぎた」という声はほとんど聞かない。
 我が家では子どもの学費ですぐに消えた。給付金自体が少ないから景気には回らなかったと結論できないのだろうか。現在、私の目の前の患者さんからは補償が少ないから仕事を休もうにも休めない、休業しようにも休業できないという状況を聞いている。
 こんな状況でもマイナンバーカードリーダーを診療所に設置させようと補助金など働きかけがなされている。高齢患者の多い当院では、間違いなく受付事務の手間が増える。加えて、発熱外来を会計含め医師ひとりで行っている今、マイナンバーカード運用の導入は勘弁願いたい。そんな時間的、精神的余裕はない。
 補助金には施策へのインセンティブ効果が含まれる。マイナンバーカードはコロナ禍の最中でも政府にとっては進めたい事業なのだろう。一方で、税には逆のインセンティブ効果がある(例:消費税をかけると消費が抑制される)。冒頭の麻生氏の言う景気浮揚を望むのなら、今すぐ消費減税を行う方が理にかなう。更に人々の生活を助けるという「政府の意思」を示すため、定額給付金を速やかに行ってほしい。これが、菅義偉首相の言う「公助」ではないか。
 長引くデフレ不況とコロナ禍による供給力喪失でインフレに陥ることはあっても、定額給付金ごときでハイパーインフレにはならない。積極的な真水の財政出動を行った他国では経済的損失は我が国ほどひどくはない。医療を守ることは生活を守ることである。一方、人々の生活を守ることで「医療崩壊」を防ぐこともできる。我々は地域住民の「生活崩壊」の存在を忘れてはならない。
(真)