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医師・医療関係者のみなさまへ

かかりつけ医認知症対応力向上研修

府医ニュース

2021年2月3日 第2954号

地域で患者・家族を支える

 大阪府医師会・大阪府・大阪市が主催する「かかりつけ医認知症対応力向上研修」が令和2年12月19日午後、府医会館で行われた。本研修は、かかりつけ医として必要かつ適切な認知症診療の知識、技能の習得や、支援体制構築が目的。当日は、ウェブ受講・会場とあわせ約300人が聴講した。
 辻正純氏(府医介護・高齢者福祉委員会委員)が座長を務め、はじめに中尾正俊副会長があいさつ。令和元年にとりまとめられた「認知症施策推進大綱」に基づき、「予防」「共生」の視点も踏まえた地域包括ケアシステム構築や適切な医療・介護の提供に努めたいと述べた。
 研修は、①診断・治療②かかりつけ医の役割③連携④制度――の観点から実施された。「診断・治療編」では、池田学氏(大阪大学大学院医学系研究科精神医学分野教授)が講演。認知症の原因となる疾患や治療法を解説した。まず、約500万人とされる軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment)への対応が課題と指摘。早期発見と医療の介入がカギとの見解を示した。また、原因疾患の治療で改善が見込める場合や、脳血管性認知症では予防が重要なことから、適切な鑑別診断およびかかりつけ医の関与が大切だと伝えた。一方で、治療が困難な認知症として、▽アルツハイマー病▽レビー小体型認知症▽前頭側頭型認知症――を解説。各疾患の特徴や診断のポイントなど、自身の臨床経験や画像所見などを引用して詳説した。
 続いて、田仲みすず氏(もり内科クリニック院長)が、「かかりつけ医の役割」を解説。かかりつけ医とは、「身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」とし、認知症に関しても▽早期段階での気付き役になる▽患者・家族の心配事に適切な対応を行う▽不安を理解し、精神的支えになる――などの役割を挙げた。
 次いで、林正則氏(府医介護・高齢者福祉委員会委員)が、「連携編」として、多職種連携を説明。かかりつけ医にとって生活状況に関する具体的な情報が得られることで、患者・家族の満足度も上昇するとした。更に、認知症の人が住み慣れた地域で安心して暮らすためには、「地域全体で支える必要がある」とし、医療・介護・行政との連携の重要性を訴えた。
 最後に、青木理恵氏(大阪市福祉局高齢者施策部認知症施策担当課長)が、「制度編」に言及。大阪市の取り組みとして、▽大阪市認知症アプリ・ナビ▽認知症初期集中支援推進事業▽大阪府警察本部との連携――などを挙げた。そして、平成30年の「認知症の人をささえるまち大阪宣言」に触れ、引き続き取り組みを進めたいと締めくくった。