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ACP研修会

府医ニュース

2021年1月27日 第2953号

意思決定支援のポイントを解説

 大阪府医師会は「大阪府在宅医療総合支援事業」の一環として、「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)研修会――多職種連携における意思決定支援」を令和2年12月12日、大阪市内のホテルで開催。オンライン配信を併用し、会場とあわせて約300人が受講した。
 当日は辻正純氏(府医介護・高齢者福祉委員会委員)が座長を務め、はじめに中尾正俊副会長があいさつ。新型コロナの動向に触れるとともに、「通いの場」の利用が減ったことによる高齢者の認知機能低下やフレイルの悪化を懸念した。また、ACPについては今後、府民への啓発が進むにつれて一層重要視されるとの見解を示し、本研修会が意思決定支援への理解を深める一助になればと期待を寄せた。次いで、高橋弘枝氏(大阪府看護協会長)から「看護職のためのACP支援マニュアル」、大阪府から府民啓発パンフレット「だから今、人生会議」の紹介が行われた。
 講演では、三浦久幸氏(国立長寿医療研究センター在宅医療・地域医療連携推進部長)が「多職種協働でのACPへの取り組み方について」と題して登壇。ACPを開始するタイミングや、話し合いのポイントなどを詳述した。三浦氏はまず、ACPの定義を「その人が重篤な慢性疾患に罹患したときに、その人の価値観、目標や治療選好に一致した医療が受けられることが確実になるようにサポートすること」と紹介。ACPの主体の多くは高齢者であるが、すべての健康ステージを支えるプロセスであると示した。続いて、ACPを開始するタイミングについて言及。疾患の特性や病状の変化で判断するほか、定期受診の際に臨床フレイルスケールを用いて話す機会を持つことを提案した。
 ACPにおける話し合いのポイントには、生活や療養の上で最も大切にしていること、身近な人生目標など、患者の価値観と意向を探ることが重要とアドバイス。診療の限られた時間のみで患者の意向を汲み取ることは難しく、多職種がチームとなって患者やその家族との話し合いを進めていくことが、患者の希望が尊重された意思決定につながると説いた。
 最後に、チームでアプローチを行う上では、関係者一人ひとりが想定している支援の方向性や認識の違いを解消することが必要と言明。皆で合意形成を図り、患者中心の支援に臨んでほしいと締めくくった。