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時事

改正予防接種法が成立

府医ニュース

2020年12月16日 第2949号

諸々不確実な中、地域に急かされる接種体制構築

 12月2日、「予防接種法及び検疫法の一部を改正する法律案」が参院本会議で可決、成立した。新型コロナウイルス感染症ワクチン接種は、予防接種法の「臨時接種の特例」に位置付けられ、厚生労働大臣の指示の下、都道府県の協力により、市町村が実施主体となって行われることとなった。自己負担はなく、通常の臨時接種とは異なり全額国庫負担となり、対象者や接種順位の決定は、都道府県ではなく国が行う。対象者には接種勧奨が行われ、接種を受ける努力義務が生じるが、有効性および安全性次第では、政令で〝適用しないことができる〟とした。また、健康被害による損害賠償のための製造販売業者等の損失に関し、国による補償を可能とした。ちなみに、平成21年の新型インフルエンザの際は、予防接種法によらず国の予算事業として行われ、勧奨や努力義務はなく、実費徴収可とされていた。
 10月27日の法案提出に先立ち、10月23日には、厚労省から自治体に向けて同ワクチンの接種体制確保事業に関する一連の文書(実施要綱・実施要領・留意事項)が発出されている。実施体制の確保のため、郡市区医師会等との連携を求め、委託契約について集合契約方式を検討中としている。また、予防接種台帳等のシステム改修、印刷・郵送準備、相談体制の確保など具体的事項を細かく示し、積極的な外部委託を勧めている。委託医療機関(接種実施会場)の要件には、ワクチン冷蔵施設、感染防止対策に加えて、国が用意する「ワクチン接種円滑化システム」への、パソコンやスマートフォンを用いた接種状況等の報告を挙げている。
 現在開発中のワクチンは、ウイルスやウイルス蛋白を注射する従前からのものと違い、ウイルスの遺伝情報を注射する、mRNAワクチン(M)や、ウイルスベクターワクチン(V)が主である。現時点で日本政府との契約または合意が公表されているものは、①米ファイザー社(M:マイナス60~80度で最大半年、2~8度で5日間保存可能)、②英アストラゼネカ社(V:2~8度で保存)、③米モデルナ社(M:マイナス20度で最大半年、2~8度で30日間保存可能)である。①は21日、②③は28日間隔で2回、いずれも筋肉注射での接種となる。
 これらを想定し、特性や包装、配送を考慮の上、受託医療機関に必要な体制をⅠ型(10日間に計1千回以上の接種)とⅡ型(接種日に原則として100回以上の接種)の2つに分けて示している。そして接種順位の上位に、医療従事者、高齢者、基礎疾患を有する者を設定している。
 国は様々な不確定な要素があることを認めつつ、令和3年前半の接種開始を目指して、体制整備の補助金を今年度予算に計上し、市町村に対して今年度中の準備事業実施を求めている。しかし短時間に多数の高齢者に、打ち方も含めて新しいワクチンを、それも2種類ある規定の間隔で2回接種することは、容易ではない。
 不透明な中、地域には、体制構築の課題が突きつけられている。
(学)