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医師・医療関係者のみなさまへ

大阪府医師会 創立73周年記念式典

府医ニュース

2020年11月25日 第2947号

国民を守る医療提供体制を

 大阪府医師会は11月3日、府医会館において創立73周年記念式典を挙行。現執行部に加え、歴代の府医役員、郡市区等医師会長が出席し盛大に祝した。また、医学教育功労者ならびに功労会員らを表彰し、これまでの功績をたたえた。なお、今回はコロナ禍の中での開催のため、例年の祝賀会ならびに健老会の開催は中止された。

 式典は栗山隆信理事の司会で開会。澤芳樹副会長の開会の辞で幕が明け、茂松茂人会長が式辞を述べた。
 茂松会長は、まず、昭和22年に府医が新制医師会として創立以来、幾多の苦難を乗り越え73周年を迎えられたのは、歴代会長・役員、会員の尽力の賜物と謝意を表した。
 次いで、新型コロナウイルス感染症について言及。感染拡大が始まり、ほぼ11カ月が経過するが、最近は欧州諸国で新規感染者数が急増、国内でも収束せず予断を許さない状況であると言明。秋冬の発熱患者の流行期を迎え、本会では協議を重ねて「医療機関に対する補償」を行政との契約書に盛り込むなど環境整備に努めてきたと力を込めた。
 一方、10月に開会された臨時国会の所信表明で、菅義偉首相が「自助・共助・公助」を強く打ち出していることに触れ、コロナ禍で経済格差がこれまで以上に深刻になっており、社会保障や格差是正に対する今後の動向を見定めたいと述べた。
 また、年末には全世代型社会保障検討会議の最終報告がまとまるが、国民への給付と負担のバランスなど、その内容には注視していきたいとした。更に▽次期の診療報酬改定▽医師の働き方改革▽地域医療構想への対応▽オンライン診療の在り方――など課題が山積しており「国民の命と健康」を守るための医療体制堅持に積極的に取り組むと誓った。
 続いて、自見はなこ参議院議員が祝辞を披露。医療機関の尽力でコロナ禍の困難を乗り切れていると述べ、国民のため、ともに力を尽くしたいと語った。
 その後、本年春に旭日双光章を受章された三橋二良氏(住吉区)と同じく秋に受章された山片重法氏(河内長野市)に花束が贈呈された。引き続き、医学教育功労者として嶋津岳士氏(大阪大学大学院医学系研究科生体統御医学救急医学教授)、朝野和典氏(大阪大学大学院医学系研究科感染制御学教授)、ならびに保健文化賞受賞記念大阪府医師会長賞を受賞した大阪市中央訪問看護ステーションを表彰した。
 また、功労会員として白寿会員8名、米寿会員95名、長期在任の本会役員・代議員・郡市区等医師会長、各種委員会委員などに感謝状が贈呈されたほか、永年勤続府医職員が表彰された。この後、被表彰者を代表し、島津氏が謝辞。今後も府医発展のために尽力すると述べた。
 最後に、中尾正俊副会長が「これからも執行部が精魂込めて会務に取り組む」とあいさつし、閉会した。

表彰者・団体の紹介

〇医学教育功労者

嶋津岳士氏(大阪大学大学院医学系研究科生体統御医学救急医学教授/大阪大学医学部附属病院高度救命救急センター長)

 昭和55年3月、大阪大学医学部を卒業。同大学附属病院特殊救急部などでの臨床研修後、米国陸軍外科学研究所に留学。62年から同大学医学部救急医学助手、講師、助教授を歴任。平成20年より近畿大学医学部附属病院救急診療部教授として従事。22年より現職に就任し現在に至る。
 研究分野では「侵襲に対する生体反応(侵襲顎)」という観点から、重症救急患者の呼吸循環動態、重症軟部組織感染症の病態、脾摘後の免疫能と易感染性、気道熱傷および一酸化炭素中毒に関して研究。また、英国の災害・教育システムMIMMSの日本への導入に尽力した。
 学会活動では日本救急医学会をはじめ、多くの学会で理事や評議員として活躍。社会活動としては、大阪府救急医療対策審議会委員長など地域の救急医療に貢献。更に原子力安全委員会委員、日本中毒情報センター理事、日本救急医療財団理事など全国的な要職も務めている。


朝野和典氏(大阪大学大学院医学系研究科感染制御学教授/大阪大学医学部附属病院感染制御部長)

 昭和59年3月、長崎大学医学部を卒業。同大学附属病院での臨床研修後、日本学術振興会特別研究員を経て、平成5年から同大学医学部第2内科助手、講師、助教授を歴任。15年に大阪大学医学部附属病院感染制御部助教授、18年に教授に就任し現在に至る。
 学外では、初期の国立大学附属病院感染対策協議会の中心として、各大学間の相互評価、アウトブレイク発生時の改善支援のシステム構築に尽力し、現在の我が国の感染制御の基礎を確立。また、全国に先駆けて保健所をハブとする感染対策ネットワークを構築した。教育活動においては、長年、同大学微生物病研究所の事業としてタイ・ミャンマー国境地帯を訪問し、全国の若手感染症医の熱帯感染症の実地トレーニングと国際保健の涵養を行っている。研究としては、薬剤耐性菌の分子メカニズムを解析し、診断法・治療法を開発。アジア諸国の政府機関や大学と共同で、薬剤耐性菌の分子疫学解析を実施し感染対策を支援。また、大阪府新型コロナ対策本部専門家会議ならびに協議会座長、政府新型インフルエンザ対策有識者会議委員などを歴任している。

〇保健文化賞受賞記念大阪府医師会長賞

大阪市中央訪問看護ステーション(若林直美氏・管理者)

 平成5年に大阪市内第1号の訪問看護事業所として、(財)大阪市おとしより健康センターが開設。20年に(財)大阪市医療事業振興協会、28年に(一財)大阪市環境保健協会に移管し現在に至る。
 開設当初は、併設の老人保健施設・医師会・行政とともに、都心における在宅療養支援連携の基礎を形成し訪問看護草創期の役割を務めた。また、地域ケア研究集会の開催を地域包括支援センターとともに取り組む。令和元~2年には、大阪市東ブロックの訪問看護教育ステーションを担い「事業所自己評価ガイドライン研修」を実施し、質向上の成果を収めた。