TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

府医医学会学術講演会

府医ニュース

2020年9月16日 第2940号

新型コロナ診療の進歩を解説

 大阪府医師会医学会が主催する学術講演会については、新型コロナウイルス感染症の影響で延期されていたが、「感染症シリーズ」から再開することとなった。定員削減や3密回避など感染防止対策を講じ、8月20日午後、今年度初開催となる講演会を府医会館で実施。萩原俊男氏(府医医学会副会長)が座長を務め、朝野和典氏(大阪大学大学院医学系研究科感染制御学教授)が「Withコロナ時代の診療――新型コロナウイルス感染症の感染対策と診断・治療」と題して講演し、会員約60人が受講した。なお、本講演は府医ホームページから視聴できる。

有症状者が滞りなくPCR検査を受診できる体制が望ましいと提言

 朝野氏はまず、新型コロナウイルス感染症の大阪府における現状について解説。東京都と比して陽性者数は少ないものの「人口比で見れば変わらない」とし注視が必要と述べた。次に、両者の状況から第2波の特徴として、▽20~30歳代に多く見られる▽重症から死亡に至る例が少ない▽60~80歳代の重症例が顕著――などを挙げた。なお、大阪では感染者の重症化が多発していると指摘。中でも80~90歳代の重症者でECMOの装着を行わなかったことが原因で死亡するケースも多く見られると指摘する一方、「超高齢者では積極的な治療を控えるケースもあり、死亡者数増加につながっているのではないか」との見解を示した。
 新型コロナウイルスの診療の進歩として、まず標準治療の普及を強調。朝野氏は、エビデンスは確立していないが、経験上、腹臥位療法は新型コロナの重症者に対して効果が期待できる治療法であると説明した。また、PCR検査における重要なポイントとして、有症状者が滞りなく検査を受診できる体制が望ましいと提言。現在実施できている2900件の検査体制を維持する必要があると加えた。
 そのほか、インフルエンザシーズンへの対策において、迅速簡便かつ高感度の検査法として自己採取式鼻腔ぬぐいの有効性を説示。この検査法の開発が実現すれば、新型コロナウイルスとインフルエンザ両方の検査を並行して実施できるメリットがあると説いた。
 最後に第3波に備え、新型コロナウイルスを予防する対策として、有効な治療薬とワクチンの開発が次のステップにおいて重要と結んだ。