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医師・医療関係者のみなさまへ

7月度郡市区等医師会長協議会

府医ニュース

2020年8月19日 第2937号

地域医療を守ることが最優先

 大阪府医師会では、郡市区等医師会長協議会を原則毎月開催し、様々な報告や連絡を行うほか、茂松茂人会長のあいさつでは中央情勢や医療の課題などを指摘し、情報共有を図っている。7月16日午後に府医会館で開催した同協議会では、新型コロナウイルス感染症やオンライン資格確認など直近の問題について協議した。その後、大阪健康安全基盤研究所におけるPCR検査の状況や新型コロナに関連する助成金活用など2題の講演会が行われた。

 冒頭、茂松会長は、7月初旬から九州地方を中心に発生した豪雨災害について報告。新型コロナウイルス禍の中で、避難生活が長期化する被災者にお見舞いの言葉を述べた。
 続いて、6月27日の日本医師会定例代議員会・役員選挙において、会長選挙の結果を受け自身が副会長選挙への立候補を取り下げたことに触れ、「支援を生かしきれなかった」と陳謝。今後は府民・会員のため一層尽力すると声を強めた。
 また、今回の新型コロナ対策の影響で、財政収支の健全化が遅れる中、「適切な医療」を提供できることが重要だと強調。患者が安心して受診できる体制、すなわち「日本の医療を守ること」が最も大切と語り、日医に対して是々非々で接しながら「支えていきたい」と力説した。

PCR検査体制の充実は必須

 続いて、新型コロナウイルス感染者が、中南米・インド・ロシアで急増、アメリカ南西部でも再拡大していることを報告。我が国でも感染者数が増加する中で「GoToトラベルキャンペーン」事業が開始されることを危険視し、医療側から意見しなければならないと懸念を示した。
 現在、若年層が中心の感染であり重傷者は少ないものの、2・3週間のタイムラグで増加は起こり得ると指摘。大阪では、60歳以上の感染者も増えつつあり、急速な病床不足に陥ると見通した。更に、大阪府は、重症者病床を最大215床、PCR検査を1日約3500件を目標としているが、「現状では難しい」との見解を示し、インフルエンザ流行期を控え、早急なPCR検査体制の充実が必要と訴えた。
 加えて、自身が参画する「大阪府新型コロナウイルス対策本部専門家会議」において大阪モデル基準が緩和されたことに対し、府医から厳しく批判したと説示。今回(警戒を呼びかける)黄信号が初めて点灯されたが、その時期が非常に遅く、今の感染者数増の結果につながっていると断じた。
 最後に、医療情勢についても詳述。全世代型社会保障検討会議や「経済財政運営と改革の基本方針2020」における▽高齢者2割負担▽オンライン資格確認▽給付と負担の見直し――などの問題を列挙。解散総選挙も見据え今後の動向を注視する必要があると結んだ。

新型コロナウイルス関連事項などを連絡

 新任された郡市区等医師会長の紹介に続き、新型コロナ関連事項などを説明。まず笠原幹司理事が、第二次補正予算を受けて開始される「不安を抱える妊婦への分娩前ウイルス検査助成事業」を解説。感染した妊産婦への支援も併せて実施されるとした。次いで、宮川松剛理事が「コロナウイルス感染症対策」として、①「大阪府新型コロナウイルス助け合い基金」支援金の第二次申請②新型コロナウイルス対策研修会の開催③PCR検査体制の拡充(地域外来・検査センター設置など)④PCR外来など出務に係る大阪府との契約の補償面――に関して詳説した。

講演会を開催

 最初に本村和嗣氏(大阪健康安全基盤研究所微生物部ウイルス課長・感染症情報センター長)が「大安研における新型コロナウイルスの検査について」と題して講演。新型コロナウイルスのPCR検査数の推移や検査の流れなどを詳説。唾液検査は、咽頭ぬぐい液に比し若干感度が低いが、充分有用性はあるとした。同氏は検査拡充には、検査の場所・方法・試薬の一点集中は避け、様々なものを並立・併用して実施することが重要とまとめた。
 続いて府医顧問社会保険労務士の真田直和氏(真田直和社会保険労務士事務所代表)が、「雇用調整助成金の最新情報とコロナウイルス対策で使える助成金」と題して講演。
 助成金に関しては、「従来からの制度を活用するもの」であるが、新型コロナに関連して要件が緩和されており、必要に応じて利用してほしいと述べた。一方で、助成金を利用する際には、雇用契約書等の管理や適切な労働管理が求められており、「日頃から準備しておくことが大切」と結んだ。

郡市区等医師会からの質疑および府医の見解
枚方市医師会・渡邉一男会長
「本年10月からのロタウイルス定期接種への対応について」

笠原理事回答 ロタウイルスワクチン接種不適当者に「重症複合型免疫不全(SCID)を有する者」が含まれる点が問題。当疾患は5万から10万人に1人の頻度で発生し、誤って接種すると重篤な副反応が予想される。従来の先天性代謝異常等疾患の新生児マス・スクリーニング検査を拡大し、産科医療機関を対象として、同免疫不全検査が有料(保護者の自己負担)ではあるが、7月から大阪市環境保健協会、8月から大阪母子医療センターで実施される。

都島区医師会・泉岡利雄会長
「インフルエンザ流行期における新型コロナウイルス感染症の診療および院内感染予防策のガイドラインの作成について」

宮川理事回答 7月12日からの大阪市内のPCR外来は唾液検査で行っており、どの程度検査数をこなせるのか、また、精度はどうなのかデータをとっている。同検査は、患者本人と看護師の体制で検体採取でき、第2波によるオーバーシュートを防いでいきたい。
茂松会長回答 インフルエンザ流行期を控え、PCR検査体制の拡充や公的病院と手上げの民間病院が主体となった地域外来・検査センター体制構築を大阪府に要請している。更に、府医でワーキングチームを立ち上げて、流行期の診療について検討する方向である。

河内医師会・佐堀彰彦会長
「厚生労働省の進めるオンライン資格確認導入への対応について」

栗山理事回答 日本医師会は、オンライン資格確認の義務化や保険証廃止によるマイナンバーカードへの一本化には断固反対であると表明している。大阪府医師会としても、日医の見解と同じく、オンライン資格確認をきっかけに患者の健康および疾病情報を一元化管理される懸念から同カードへの一本化には反対の意向である。しかし、将来的に医療のIT化は避けられず、オンライン資格確認導入を検討されている医療機関には、令和5年3月までの補助金を活用できる期間にシステムを導入されることは、費用面からはメリットがあると考えている。