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時の話題

新型コロナによる病院経営への影響

府医ニュース

2020年8月5日 第2936号

WAMによる6月経営動向調査から

 WAM(独立行政法人福祉医療機構)は、福祉の増進と医療の普及および向上を目的として平成15年10月に設立された厚生労働省所管の独立行政法人である。事業は、社会福祉施設および医療施設整備のための貸付事業、経営診断・指導事業など多岐にわたる。また、福祉医療施設経営における現場の声・実感を把握し、福祉医療政策の適切な運営に寄与するため、四半期ごとに「病院経営動向調査」ならびに「社会福祉法人経営動態調査」(WAM短観)を実施している。
 7月9日、本年6月に行った「経営動向および新型コロナウイルス感染症の影響等について」が公表された。調査対象は、病院経営動向調査の375モニター病院で、有効回答数は311病院(一般病院183、療養型病院71、精神科病院57)。6月1日から19日の期間にウェブアンケートで行われた。本調査では、各判断項目について3個の選択肢を用意し、選択肢ごとの回答数を単純集計、全回答数に対する「構成割合」を算出後、「第1選択肢の構成割合」―「第3選択肢の回答構成割合」=DI(Diffusion Index)として算出し、%ポイント(以下%Pt)で表示されている。例えば医業収益の項目について「増加」が40%、「横ばい」が30%、「減少」が30%の場合、医業収益DIは、10%Ptとなる。この指数を定期的に調査して推移を見ることで、経時的変化を大まかに把握することが可能となる。
 6月調査では、病院の主要指標である医業収益DIは、いずれの病院類型においても3月調査より大きく低下。特に一般病院は、感染症拡大に伴い、感染症患者(疑い患者を含む)への対応や病棟受け入れ制限、一般患者の受診控えなどの要因が重なり、3月調査の14%Ptから、95%Pt低下の△81%Ptと急激に悪化した。医業利益も同様に悪化し、△86%Ptとなった。その結果、3月は8%Ptとやや黒字の病院が多い状況にあったが、6月調査では、61%Pt低下の△53%Ptとなり、多くの病院で赤字となった。3カ月後の先行き予測でも一般病院では現下の状況からの若干の回復を見込んで医業収益DIはやや持ち直すと予測されるが、それでも△56%Ptと厳しい水準であった。
 このような収支状況が続けば、資金繰りDIは、6月調査では△23%Ptであるが、先行きは14%Pt低下の△38%Ptと一層の悪化が見込まれた。従業員数DIは、従来からマイナス値が続き不足感が強かったが、一般病院のDIが24%Pt上昇の0%Ptと改善した。これは感染症の影響により、採用と離職のバランスの変化や患者数の減少等による一時的なものと解釈され、先行き予測では、引き続き厳しい状況が続くとみられた。療養型病院も医業収益DIが66%Pt低下の△70%Ptと大幅な悪化を認めた。療養型病院は、病院類型の中では経営状況が比較的良好なセグメントであるが、6月調査では、医業収支や資金繰りなど主要項目で軒並み初のマイナス値となった。精神科病院でも主要なDIは悪化しており、従来から景況感は厳しいことから感染症が長期化した場合の経営への影響が懸念される。今後、経営が行き詰まる病院が少なからず表面化すると考えられる。国による強力な支援が求められる。