TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

ミミズクの小窓

骨格筋を守るラジオ体操

府医ニュース

2020年7月29日 第2935号

 幼少のみぎり、ミミズクは夏休みに賞品の文房具欲しさに早朝からのラジオ体操皆勤を目指したが、3日程で止めた。堪え性がなかったわけではない。子ども心にも、払う労苦と得られる利得を天秤にかけた時、「割に合わない」という結論に至ったからである。幼くして〝トレードオフ〟の概念を確立していたということだ。これが後に医師になってどれだけ役立ったことか……。「嘘つけ!」という声が聞こえるので先に進む。
 日本人でラジオ体操を知らない人は稀であろう。むしろラジオ体操の音楽が聞こえたら自然に体が動く、という人が多いのではないか。いかにも手軽な健康運動にみえるラジオ体操だが、その効果は侮れないようだ。
 京都府立医科大学のグループは最近、強度の高い筋力トレーニングでなくとも1日2回のラジオ体操を行うことで糖尿病患者の筋肉量を維持できることを報告した(BMJ Open Diabetes Research & Care 2020 8:e001027)。対象者は「糖尿病教育入院(2週間)」の患者である。
 著者らは42人の2型糖尿病のうち15人(男性11人、女性4人)を朝食前と夕食後の1日2回、ラジオ体操第2を3分間行う「ラジオ体操実施群」とし、残りの27人(男性13人、女性14人)は「ラジオ体操未実施群」とした。なお両群とも1日60分の有酸素運動(速歩)を行った。両群間で年齢やBMI、糖尿病の指標であるHbA1cなどには差がなかった。
 この研究の主な目的は、入院14日後の体重と骨格筋肉量指数(SMI)の変化を両群で比較することなのだが、四肢骨格筋量については、最も信頼できる身体組成評価法であるDXAと優れた相関があることが実証されているInBody 720という機器を用いている。
 さて、結果はといえば、体重はラジオ体操実施群、未実施群とも入院期間終了後に1.5~1.7㌔ほど減少していた。一方SMIの平均値はラジオ体操実施群ではほぼ不変であったのに対し、未実施群では有意に減少していた。SMIが減少していた割合は、未実施群で85.2%(23/27人)であったのに対し、実施群では46.7%(7/15人)であった。
 ラジオ体操は1回3分という手軽さながら第2であればその運動量は4.5MET、すなわちバドミントン13分に匹敵するという。面倒くさがりに最適の筋量維持法ではないか。早起きも不要であろう。これならミミズクも続ける自信がある。1週間は大丈夫だ。