TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

ミミズクの小窓

ブルーライトは寿命を縮める!?

府医ニュース

2020年5月27日 第2929号

 〝街の灯がとてもきれいねヨコハマ~♪〟ご存じだろうか、1968年リリースのいしだあゆみさんの大ヒット曲、『ブルー・ライト・ヨコハマ』である。高校3年の冬、ミミズクはこの曲を聴きながら大学受験勉強に勤しんでいた。翌年1月に安田講堂攻防戦が勃発して東京大学入試が中止になったのは心底驚いた。
 思い切りベタな前振りで恐縮だが、今回のテーマは〝ブルーライト(BL)が人体に及ぼす影響〟である。BLは波長380~500ナノメートルの可視光線を言う。LED照明と電子機器の普及によりごく身近な存在となった。太陽光線を除き、照明設備以外の三大曝露源は液晶テレビ、スマホ、パソコンである。光を波長で並べると、BLは紫外線A波のすぐ隣に位置するので、可視光線の中では最も高いエネルギーを持つ。植木等さんではないが、〝これじゃ、身体にいいわきゃないよ、わかっちゃいるけどやめられねぇ〟(『スーダラ節』1961年)であろう。
 以前よりBLが睡眠やサーカディアンリズムに良からぬ影響を与え(PNAS 2015 112:1232)、皮膚老化(Free Radic Biol Med 2017 108:300)や、うつ・糖尿病・高血圧・肥満・がんなどの加齢関連疾患に関わっているという報告はあったが(npj Aging Mech Dis 2017 3:9)、実際に寿命に及ぼすBLの影響についての実証的な研究はなかった。そこで今回、米国オレゴン州立大学のグループはショウジョウバエを用いた寿命実験を行った(npj Aging Mech Dis 2019 5:8)。「なんだ、ハエか」と言ってはいけない。ヒトを対象とした寿命実験など行った日には、成果が出る頃には対象者どころか研究者の寿命が尽きている。
 結果はそれなりにインパクトがある。BLを1日12時間浴びたハエは、24時間暗闇で過ごしたハエや1日12時間BLをカットした白光を浴びたハエに比べて有意に寿命が短く、網膜と神経細胞に損傷が生じ、壁を登る能力も低下した。何と眼のない突然変異体においても脳の神経細胞変性が認められたという。また老いたハエではBL曝露によりストレス応答遺伝子が発現した。この現象は若いハエでは見られないので、著者らはBL曝露の蓄積は老化の過程でストレッサーとなると推論している。
 聖書『創生記第1章』に言う。〝神は仰せられた。「光あれ」。すると光が現れた。神は光を見て良し、とされた〟。ミミズクは神様の思し召しが分かるような気がする。「汝、BLは信号だけとするべし」。